研究概要 |
本研究の目的は,小・中学校における児童生徒のメンタルヘルス支援に向けた教員の心の教育実践力の向上を目指し,教育現場で有効なメンタルヘルスに関する支援法を確立させることにあった。本年度は,(1)現職小・中学校教員及び学校に配置されたスクールカウンセラーを対象に心の健康相談に関するアンケート調査を実施すること,(2)結果から得られた研修内容に関するニーズを主軸に,また先行研究・文献研究をもとに心の健康プログラム内容の選定を計画にあげた。 研究計画に基づき公立小学校小学校15校(297名),中学校7校(156名)計453名の教職員を対象に「児童生徒の心の健康問題」に関するアンケート調査を行った。教職員等が過去に経験した児童生徒の心の健康問題に関する対応では,小学校・中学校とも,(1)「感情の起伏の激しさ,不機嫌,キレやすいなどの情緒不安定」,(2)「読み・書き・算数(数学)など通常の指導で上達困難な状態(学習障害)」,(3)「じっとしていられない,その場とは関係ないことをやりたくなる多動性の問題」があげられた。次に心の健康問題に関する研修希望内容は,上記結果と同様の3項目があげられた。多くの教職員が対応にあたる機会のある問題に関し,より専門的な知識や対応への関心が集まっているとの結果を得た。 児童生徒のメンタルヘルス支援に向けた研修内容(プログラム)としては,感情の起伏の激しさ,不機嫌,キレやすいなどの情緒不安定の問題をターゲットに絞り,認知行動療法的介入法を組み入れた研修会の開催や,児童生徒対応の多くは個別の事例であることから事例に即した対応法に関する研修会の開催を構成した。試行的なプログラムは次年度実施を行い,得られた結果に基づき,より有効な支援法について検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度にすでに小学校,中学校教員及び学校に配置されたスクールカウンセラーを対象に児童生徒の心の健康問題に関するアンケート調査を行い,結果の分析を遂行している。また結果をもとに,次年度研究計画にあげた研修会開催を企画し調整済みである。本年度の目的を達成したため,当初の計画通りと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究成果について結果分析を行い,結果の一部を日本教育心理学会,日本発達心理学会で発表予定である。研究計画に大きな変更はないが,研究協力先である教育委員会及び,小学校・中学校や教員の事情によって研修会開催数及び内容に多少の変更が起こりうる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度内に分担した作業(アンケート結果報告書作成及び論文翻訳)の完了が遅れたことによる人件費・謝金の未払いが生じたため。また,アンケート分析結果から児童生徒のメンタルヘルス支援に向けた研修内容(プログラム)の修正(計画の変更)が生じたため。 人件費・謝金については,(1)アンケート結果報告書作成及び論文翻訳にかかる謝金支払いに使用する。(2)アンケート分析結果を受けキレやすい児童生徒らへの実践的研究を進めている方を講師に招へいすることとした。講師派遣に伴う経費(交通費・宿泊費・謝金、資料代等)に充てるとともに、講師との打ち合わせのための国内出張旅費に充てる。
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