平成27年度の目的は、中学生を対象とした自尊心および関連要因(批判的思考態度、友人関係、親子関係、教師との関係、学校享受感、身体意識等)に関する縦断調査を終え、その結果を報告書にまとめることであった。 3年間、9時点での縦断調査が終了したことにより、自尊心をはじめとし、中学3年間の諸要因の変化パターンとそれぞれの要因と自尊心の関係が明らかになった。 特に本研究の主目的であった「思春期の自尊心低下の要因」については、批判的思考態度の発達が関係していることが明らかになった。具体的には中学校1年入学時の批判的思考態度の得点が高い者(思考の発達が進んでいる者)ほど、その後、自尊心が低下していくことがわかった。ただし、その低下は中学2年生までであり、その後は緩やかに上昇していくことも明らかになった。さらに中学1年次の自尊心の高い者は自尊心が低下するものの、それでももっとも自尊心が低下する時点を比較しても、他の群に比べると高い水準で低下は止まっていた。つまり、批判的思考態度が、一方で自尊心の低下をもたらすものの、他方で過度な低下を防ぐこともあきらかになったということである。 したがって上記の結果を受け、調査最終年度には、実際に調査に参加した中学生を対象に、批判的思考態度を養うことを狙いとした授業を行った。具体的には、自らの自尊心の変化や性差を批判的に検討するような授業を行った。それに基づき、思春期における自尊心の過度な低下を防ぐ授業を提案した。
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