研究課題/領域番号 |
25380926
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
井村 修 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (20176506)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 筋ジストロフィー / 発達障害 / SRS / PARS / CNS障害 / ジストロフィン異常 |
研究概要 |
ジストロフィン蛋白に異常を持つ筋ジストロフィーにおいては、よく知られている筋障害だけでなく、最近では脳内に存在するジストロフィン・アイソフォームの影響による、中枢神経系の障害(CNS障害)が注目されている。そこで本研究では,筋ジストロフィー患者において、CNS障害の表現型としての自閉的傾向(PDD傾向)が、一般群と比較し高いのかどうか検討することになった。 筋ジストロフィー患者のPDD傾向を,SRS (Social Responsiveness Scale) とPARS (Pervasive Developmental Disorders Autism Society Japan Rating Scale) を用いて,測定した。「国立病院機構刀根山病院」に通院および入院中の筋ジストロフィー患児・者の保護者の協力を得て、対象となる患児・者39名(SRS)と46名(PARS)のPDD傾向を評価した。SRSでは30.8%にPDD傾向が見られ,高得点群と低得点群の2群別れるような分布を示した。PARSでは幼児期ピーク評定で26.1%,現在評定で13.0%であった。幼児期から得点の高かった者は、現在評点でも高い値を示した。発達に伴いPDD傾向が消失した群もいた。 以上の結果から、筋ジストロフィー患児・者においては、一般群では10,000人に5~20人と推定される有病率(DSM-IV-TR)と比較し,著しく高い出現率であることが明らかとなった。このような高い出現率は、筋ジストロフィーのCNS障害と関連すると推定される。今後、神経心理学的な検査や医学的・生物学的精査も行い、関連性を明確化する必要があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筋ジストロフィーにおいて、SRSおよびPARSを用い、彼らのPDD傾向の高さを示すことができた。したがって研究はほぼ順調に遂行されていると思われる。しかし,当初予定していた対象者数をやや下回り、現在の協力施設「国立病院機構刀根山病院」での評価可能な対象者の上限に近いと考えられる。また、神経心理学的な検査結果や医学的データは現在収集中である。
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今後の研究の推進方策 |
他の国立病院機構の筋ジストロフィー病棟を有する病院にも働きかけ、データ数を増やすとともに、神経心理学的検査や医学的データもさらに収集し、PDD傾向に影響を与える要因を明らかにする予定である。
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