本研究は青年期以降のアスペルガー症候群(AS)の社会的認知および神経認知特性と、社会不適応状況との関連を探り、併せて不適応状況に関する語りのテキストマイニングにより、当事者の視点から不適応状況の分析を試みた研究である。その結果、社会的認知および神経認知の特性を背景にした具体的な不適応状況との関連が類推可能であること、不適応状況はAS当事者の論理的でむしろ適切なReasoningの積み重ねによる対処が、定型発達者の言動に内在する状況依存性、好悪依存性、ナイーブ・シニシズム(Naive cynicism)といった、イロジカル(illogical)な問題に対応困難となる場合に生じることが示唆された。
|