今年度は、最終年度に当たるため、研究協力者や研究支援者を得て、濃密に関わることのできた1大学の支援結果についてのまとめを行った。 相談員2名が常勤し、学生サロン(自由に集まれる部屋)も併設した地方総合大学で、4年間に発達障害傾向を有し、就労関係の支援が必要であり、且つ研究協力の得られた学生は26名(男性16名、女性10名)であった。 それらの学生について、来談経緯・相談歴・診断・家族背景・就労経験の有無などをまとめた。一般就労を目指すことは難しい学生が多かったので、実際の就職活動は、地域の就労移行支援事業所などを利用することが多かったが、それに対する抵抗感も強かった。就労移行支援事業所などを通して現実的な就職活動ができた群(8名)と、十分な見通しが立たないまま、現実的な動きをするには至らなかった(18名)を比較した。その結果、現実的就職活動が可能だった学生は、①診断を受け、高校時代に通院歴がある学生で、②1年時より学生相談を利用しており、③留年や休学を挟まず順調に進級していた。そして、④親も協力的で、⑤過去にボランティア体験をしている割合が大きかった。 このことは、昨年度の事例研究による①自己認識、②家族の理解と協力、③経験と支援を受ける体験、④二次的障害軽減、⑤障害特性の受容の重要さを確認できることとなった。 また、今年度は、昨年度の研究成果を日本学生相談学会に「発達障害学生が『障害者枠での就労』を選択する要因」として、日本LD学会に「ASD傾向学生の障害特性と卒業研究でのつまずきの検討」として発表した。(653字)
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