研究課題/領域番号 |
25380938
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研究機関 | 跡見学園女子大学 |
研究代表者 |
酒井 佳永 跡見学園女子大学, 文学部, 准教授 (60349008)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 精神疾患 / 家族支援 / 介護負担 / 気分障害 |
研究実績の概要 |
研究1として、都内の総合病院の精神神経科において、気分障害患者の包括的な評価と家族支援を行うプログラムを実施するとともに、家族の介護負担と関連する要因と家族が医療機関に期待する支援についての調査を実施している。現在、対象者の募集を続けており、2016年度末に結果を報告する。 一方、先行研究でも指摘されているように、気分障害患者の家族は患者の受診に同行しないことが多く、家族会などのプログラムへの参加者も少ない。そのため医療機関に来院する家族のみを対象とした場合、家族が抱える困難や期待する支援ニーズの一部しか把握することができないと考えられる。そこで研究2として、医療機関における調査では対象となりにくい家族も含めた支援ニーズを明らかにするため、インターネット調査を実施した。対象は気分障害をもつ配偶者もしくは子どもと同居する300人の女性とし、医療機関で実施されることのある家族支援サービスの利用希望を問う5項目と「医療機関に期待する家族支援サービス」に関する自由記載項目について、質的、量的な分析を実施した。 配偶者は249人(平均年齢44.7歳)、親は51人(平均年齢51.6歳)であった。親は配偶者よりも家族支援サービスの利用を希望する傾向、配偶者は専門家による講演会や家族会よりも、個別相談を希望する傾向が認められた。 期待する家族支援サービスに関する質的な分析では、家族への心理的サポート、主治医から家族への説明、症状への対処法、経済的負担の軽減、家族会への参加、電話やインターネットなど利用しやすい相談方法へのニーズが抽出された。一方、患者が社会復帰することで家族の負担は軽減するため、家族への支援よりも患者の社会復帰促進を希望する声も多かった。今後、家族支援を利用しやすい方法で提供するとともに、患者の社会復帰を促進することが、家族の負担を軽減するためには重要だと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度に出産休暇および育児休暇を取得していたため、2014年度には研究が予定よりも遅れていたが、研究期間を1年延長したことにより、研究期間終了までに当初の計画を遂行できる見通しがたった。 2015年度には医療機関での支援プログラムと調査を開始し、現在は対象者数を増やしているところである。また2015年度には、研究計画を一部変更し、インターネットでの調査も実施した。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度は研究計画の最終年度である。2016年度においても医療機関における支援プログラムおよび調査を継続し、年度末に結果を報告する。また2015年度には気分障害患者と同居する女性を対象としたインターネット調査を実施した。その結果、配偶者と親では支援ニーズに違いがあることが示唆されたため、2016年度には、気分障害患者と同居する配偶者(男性および女性)を対象としたインターネット調査を実施し、女性配偶者と男性配偶者における支援ニーズや体験する困難の違いについても検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度に産前・産後休暇および育児休暇を取得したため、研究が一時中断した。2015年度は概ね順調に研究は進捗しているが、当初計画よりは8カ月から1年間の遅れが生じているため、次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度には支払い請求額はなく、次年度使用額がそのまま研究資金となる。 具体的な使用計画としては、医療機関における調査に関わる人件費および物品費等、インターネット調査の実施にかかる費用、および研究成果の分析および発表にかかる費用として使用する計画である。
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