研究実績の概要 |
本研究は,成人を対象とした,悪夢の認知行動療法に関する実証的効果研究」を最終目標として実施された。初年度は「日本人成人における悪夢障害の実態と特徴の解明」のために研究1「悪夢障害の有病率,内容比較」,研究2「悪夢とその他の精神・身体疾患との合併」,研究3「悪夢が自殺企図を予測するか?」を実行した。紀要,学会発表のみならず,その過程で作成した悪夢の苦痛度尺度が学会誌に採択された。2年目である平成26年度は「覚醒時の思考と悪夢の思考の連続性に関する認知科学的解明」として,悪夢症状に悩む者を抽出し,研究4「悪夢患者特有の認知的・行動的特徴」,研究5「体験したストレスフルライフイベントに対する認知と,悪夢の中に現れるイベントや認知との連続性」について検討し, H27年度に予定されていた研究7「悪夢をもたらす覚醒時のストレスフルライフイベントに対する認知的介入と悪夢の中に現れた認知的介入の効果の比較」研究を前倒しして行った。頻回悪夢想起者6名を対象に一事例実験デザインによる縦断的なデータ収集を行った。H27年度の「悪夢障害に対する認知行動療法の支援効果の検証」では,統制条件の夢データと認知行動的介入条件(イメージエクスポージャー,認知的再構成,イメージリハーサル)の比較を行い,さらにこれらの成果に関して,学会誌に発表した他,聴覚障害者の悪夢についての関連論文が国際誌に採択された。研究6「悪夢障害用認知行動療法の手続きを公式化」に関しても,学会誌に発表し,さらに実践家向けに「睡眠障害の個人差の理解と心理学的支援」(フィスメック社)を刊行した。H28年度はWEBのデータの収集をはじめとして,これまでの研究の総括として,国際学会でシンポジウムを設け,日本からの悪夢研究の発信を行い,国際的に情報交換をする機会を得た。研究成果をまとめた啓蒙書「行動科学ブックレット 眠る」(二瓶社)を刊行した。
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