研究課題/領域番号 |
25380945
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
水野 康弘 帝京大学, 医学部, 教務職員 (60646701)
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研究分担者 |
張 賢徳 帝京大学, 医学部, 教授 (00297136)
北島 正人 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (30407910)
有木 永子 東洋学園大学, 人間科学部, 講師 (40319611)
津川 律子 日本大学, 文理学部, 教授 (90349944)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 心理検査 / 自殺 / 風景構成法(LMT) / 自己評定式抑うつ性尺度(SDS) / 文章完成法テスト(SCT) / 包括システムによるロールシャッハ法 |
研究実績の概要 |
<研究計画の概要について> 1)包括システムによるロールシャッハ法(Ror.)のSuicide Constellation(自殺の可能性;S-CON)指標と風景構成法(LMT)の「構成」および「色」との関連性について76例の心理検査データを用いて分析を行った結果を、専門学術誌に投稿した。 2)平成26年度は、蓄積してきた98例の心理検査データに新たに13例を追加した。その内、3種全ての心理検査(自己評価式抑うつ性尺度:SDS、文章完成法テスト:SCT、Ror.)を同時期に受検した87例を本年度の研究のメインデータとした。自殺リスクの観点から、Ror.のS-CONとSDSの総得点および希死念慮頻度を問う質問19の得点との関連性、S-CONとSCTの「自殺」および「死」の刺激語に対する記述内容との関連性について、それぞれ検証を行った。 <研究成果について> 1)LMTの一部のアイテムに通常あまり使われないと考えられる色が用いられている場合、S-CONの下位変数に示される対象者の自殺リスクの一端が表れている可能性が示唆された。平成27年3月31日時点で、専門学術誌に投稿し査読審査中である。 2)Ror.のS-CONとSDSおよびSCTとの関連性について統計的検討を行った結果、S-CONとSDS総得点との関連は見られず,SDS質問19得点と有意な関連を示した。また、S-CONの一部の下位変数は、SDS質問19得点の「2点以上」と関連していた。SDSを用いた自殺のリスク評価は,全体的な抑うつの程度よりも,SDS-Q19の希死念慮頻度に着目することが重要であることが示唆された。一方、S-CONとSCT刺激語「自殺」および「死」への記述内容とは,有意な関連が認められなかった。これには複数の要因が検討され得るが,SCTの記述を数量的に扱う先行研究が少ないため,本結果の解釈は慎重を要するものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度に新たに追加した対象者データは13例であり、当初計画していた20例に概ね近づくデータ数を収集できた。また、当初の計画通り、包括システムによるロールシャッハ法のS-CONと自己評定式抑うつ性尺度(SDS)および文章完成法テスト(SCT)との関連性について、それぞれ自殺リスクの観点から統計的手法を用いて検討を行った。 なお、包括システムによるロールシャッハ法のSuicide Constellation(自殺の可能性;S-CON)指標と風景構成法(LMT)の「構成」および「色」との関連性に関する投稿論文は平成27年3月31日時点で査読審査中であり、平成27年度の計画に移行する。 以上より、平成26年度の研究目的の達成度は、当初の計画通りにおおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、主に以下2点について検討を進める方針である。 1)包括システムによるロールシャッハ法のSuicide Constellation(自殺の可能性;S-CON)指標と風景構成法(LMT)の「構成」および「色」との関連性に関する論文投稿を継続し、専門学術誌への掲載を目指す。 2)自殺リスクの観点から、これまで得られた各種心理検査間の関連性に関する知見と、実際の自殺既遂および未遂をはじめとした対象者の予後データとを照合し、その臨床的妥当性を検証することにより、より臨床的に活用できる指標を見出すことを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度支出分に際して値引きが生じたため、結果的に予算額と支出額に差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の予算額と併せて使用する予定である。
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