研究課題/領域番号 |
25380947
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
今野 紀子 東京電機大学, 情報環境学部, 准教授 (40349808)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 身体 / イメージ / 健康支援 / 心理療法 / 彩色 / BCDM |
研究概要 |
身体イメージ彩色図法(BCDM:Body state Coloring Diagram Method)は,自身の心身の状態をイメージして身体図に彩色する技法であり,イメージ療法の一種といえる.BCDMには,心身の状況・身体感覚・セルフ・イメージを把握するアセスメント機能や,カタルシス効果によるストレス軽減作用,健康シミュレーション効果が認められており,メンタルヘルスの促進・向上や心理教育のツールとして期待される.近年,医療分野においても,イメージ療法が注目されている.臨床研究によって心の働きが免疫力を左右することが明らかになっており,主に気持ちをリラックスさせ,体の免疫機能を高め,治療効果を上げる目的で用いられる.イメージの持つ治癒力は,心とガンを関係付けた精神腫瘍学や,脳と免疫系の関連に着目した精神神経免疫学などの最新の分野でも応用が進められている.本研究では(1)高齢者や児童など幅広い年齢・属性の対象者でBCDMのフィールドテストを行い,定量的・定性的効果について検証すること,(2)操作の簡単なモバイル端末を利用し,指で表示画面に色を塗る感覚で簡単・気軽に実施できるセルフ・トリートメント版システムを開発することを目的としている. 初年度である平成25年度は,タブレット型モバイル端末で実施可能なBCDMシステムの基本部分と,実施データを効率良く管理・分析して有効活用するための専用サーバ・システムを開発した.また,成人を対象としたフィールドテストを実施し,心身疾患との相関,彩色作業がもたらす気分変化など心理的影響を定量的に評価した.BCDMにより体への気づきや再認識がなされたこと,自己の「ストレス状態」と「リラックス状態」についての理解,自らの傾向への気づきといった,自己洞察を深める契機となったことが認められた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの達成度として,以下の3点があげられる. (1)対象者は成人に限られたが,BCDMのフィールドテストを行い,Visual Analog Scale(VAS)による主観的心理評価,シェアリング後の自由記述内容の検討を行った.その結果,ストレス度や心身疾患との相関,彩色作業がもたらす気分変化など心理的影響を定量的に評価することができた. (2)操作の簡単なモバイル端末を利用し,指で表示画面に色を塗る感覚で簡単・気軽に実施できるセルフ・トリートメント版システムの基本部分を完成した.その構成は,表紙画面(タイトル・操作説明・インフォームドコンセント)・対象者の基本データ入力フォーム画面・自動生成データシステム(作業日時,端末IDの自動生成)・事前質問画面(VASによる主観的心理評価)・現在の体の状態をイメージする画面・現在の自分の体の状態を身体図に彩色する画面・リラックス状態をイメージする画面・リラックス状態を身体図に彩色する画面・事後質問画面(VASによる主観的心理評価.評価項目は事前質問と同じ)・終了画面である. (3)画像データベースの管理を行う専用サーバ・システムの基本サーバ機能を開発した.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は以下のように研究を推進する. (1)「身体イメージ彩色図法」の実施範囲拡大とデータ蓄積ならびに量的検討:平成25年度に引き続き,本メソッドによる事例の収集範囲を量的・質的に拡大し,有効データの調査と蓄積を継続的に行いながら,現在までに得られた,性別・年齢・心身疾患・ストレス度による差異,主観的心理評価結果,シェアリング後の自由記述内容,彩色表現などについて定量的に検討する.(2)モバイル端末を利用したセルフ・トリートメント版システムの試験運用:平成25年度に開発したセルフ・トリートメント版システムのフィールドテストを実施し,実用面での課題の洗い出しを行いながらその効果を検証する.(3)専用サーバ・システムの機能エンハンス:デジタル化データを,画像データの専用サーバに直接アップロードできる仕組みを追加し,同システムをエンハンスする. 平成27年度については,以下のように研究を推進する計画である. (1)「身体イメージ彩色図法」の実施範囲拡大とデータ蓄積ならびに質的検討:平成26年度に引き続き,本メソッドによる事例の収集範囲を量的・質的に拡大し,有効データの調査と蓄積を継続的に行う.また,過敏性腸症候群や不定愁訴などの心身疾患を抱えている者に対して,本メソッドを継続的に行うことでの作用についての検証も行い,本メソッドを量的・質的側面から評価し,健康支援への効果的な活用方法について検討する.(2)研究成果のアウトリーチ:本研究によって得られた成果・知見を,関係の各学会・シンポジウムで発表,ホームページへの掲載により広く社会に紹介する.特にメンタルヘルスに関心を持つ人々に,本研究の意義やメソッドの周知を図る.また,隣接テーマや手法を有する他研究との交流を深め,本研究の次の課題を発展的に展望したい.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は残部の反応計測実験用チップを使用し購入は平成26年度に繰越したためと,専用サーバ利用料金の支払いが平成26年3月締で,支払いが4月になってしまったため. 専用サーバ利用料金の支払い(15,750円)と,生体反応計測実験のためのチップ購入(62,110円)に使用する.
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