研究課題
本研究は,職場上司等が復職者のメンタル不調の兆候を簡便にかつ的確に評価することが可能なチェックリストを開発するとともに、そのチェックリストを活用して、職場上司等が、復職者の再発予防のために適切な支援や関わりができるようになるための研修プログラムを開発することを目的としている。平成26年度は,メンタル不調の兆候チェックリストの信頼性と妥当性の検討を行うとともに,他者評価によるうつ状態の判別力について検討を行った.まず,メンタル不調の兆候チェックリスト34項目について,同時点におけるうつ症状の重症度,職場適応,および精神疾患の可能性の予測が可能かどうか,また,1ヶ月後のうつ症状や職場適応の悪化,および精神疾患罹患の可能性の予測が可能かどうかについて検討を行った.相関係数を算出し,その結果から,有意確率が示された項目として10項目を抽出した.そして,抽出された項目について,ROC解析を行い,AUC(Area Under the Curve)の値を求め,抽出した項目の予測力とカットオフ値の検討を行った.その結果,メンタル不調の有無において,10 項目セットでは,現状予測,1 ヵ月後未来予測においても兆候尺度の得点が22 点以上であればメンタル不調の可能性を考える必要があることが示された。また,うつ症状の重症度において,10 項目セットでは,1 ヵ月後の未来予測において,軽症・中等症は兆候尺度のカットオフ得点は22 点以上,重症では26 点以上であることが示された。このことから兆候尺度得点が,22 点以上であればうつ状態である可能性を考慮する必要があり,また,26 点以上の場合には,今後うつ症状の更なる悪化の可能性が考えられるため,被評価者をより注意深く見守る必要があると考えられる。今後,臨床的妥当性を高めるために,さらなる検討が必要である.
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り進展しているが,臨床的妥当性を高めるためにさらなる検討が必要である.
平成27年度は,これまでの研究成果を基に,チェックリストを用いた管理職向けの研修プログラムを検討する予定であるが,「管理職による見守り」の促進のために,管理職が復職者を支援するにあたっての困難感に関する調査を実施し,困難感の解決を考慮に入れたプログラム案を検討していくこととする.
平成25年度予定していた調査が,調査先の事情で平成26年度にずれ込んだため,平成26年度中に調査予定をすべて終了することができず,一部の調査を平成27年度も継続して行うことにしており,その費用が繰り越されている.
平成27年度に予定されている研究を進めながら,同時進行で平成26年度に終えることができなかった一部の調査を実施し,すべての研究計画を予定通り完遂する.
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (1件)
臨床心理学
巻: 85 ページ: 43-48
Depression Frontier
巻: 12 ページ: 41-45
ストレス科学
巻: 29 ページ: 45-54