筆者は精神病顕在発症を予防するための早期介入の推進のためには精神病未治療期間(duration of untreated psychosis : DUP)が長くなる要因と、DUP短縮のための工夫点を生徒本人の病前性格、精神科受診に対する本人と両親・関係各者の捉え方、精神疾患に対する理解度の向上、治療意欲の継続、医療機関との協力関係の形成能力育成も視野に入れた観点から見出し、それらを心理面接の中に導入することを検討した。PRIME-Screen日本語版をA大学の135名の大学生に施行し、リスク陽性者29名のうち、10名に半構造化面接とバウムテスト、風景構成法を行い、前駆症状と自我機能の検討を試み、「アットリスク精神状態群の未治療期間短縮のための心理的面接法の開発 第2報―未治療期間の要因となる自我親和型の障害について検討する―」という題目で日本心理臨床学会第34回秋季大会でポスター発表した。 B大学63名の大学生を対象にRIME-Screen日本語版を施行し、A大学の調査結果と比較検討した結果を日本精神保健・予防学会第19 回大会で「未治療期間の要因となる自我親和型の障害についての検討―精神科治療経験者と未治療者の自我親和型症状の比較検討」という題目でポスター発表した。半構造化面接に応じたリスク陽性者10名のうち、6名が精神科受診歴、服薬治療歴があり「被害関係念慮」は未治療者も精神科通院歴のある者も自我違和的体験であり、「自己不全感」は未治療者には自我違和的体験であるが、受診歴のある者には自我親和的体験であるという考察が導き出された。「現実検討能力低下」は両者にとって自我親和的体験である。当初は幻聴や幻覚が恐怖をもたらす体験であった可能性があるが、治療経過に伴い幻聴や幻覚と共生していく術を身につけてきたことにより、これらの体験が自我親和的なものに変容した可能性も考えられた。
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