最終年度はコーチング心理学の学術書の出版と、海外研究者とのより強固な連携の確立を目指した。 2015年9月にナカニシヤ出版より刊行された「コーチング心理学概論」は、本研究の研究者2名を含む編著者3名と15名の執筆者により、日本で初めてのコーチング心理学の学術書として出版された。コーチングの理論および実践のみならず、国内外のコーチング心理学の学会や大学院プログラムなどに関する情報も加え、コーチング心理学に関心を持つ研究者や実践家にとってスタンダードな手引書として活用され得る書物になったと確信する。 海外のコーチング心理学研究者との連携は、研究初年度に研究者2名で国際コーチング心理学会会長のDr. Palmerをロンドンシティ大学に訪問し、情報交換をしたのを皮切りに、西垣はCentre for Coachingでコーチングトレーニングプログラムを受講しCertificateを取得したほか、2014、2015年はロンドンで開催された国際コーチング心理学会において研究発表を行い、コーチング心理学の世界的動向を把握すると共に、各国の研究者との交流を深めた。これらの成果は2016年に日本で開催されるICP(国際心理学会)において「アジアにおけるコーチング心理学」と題する招待シンポジウムの開催という形で実を結んだ。今後とも連携を維持し、海外のコーチング研究者を日本に招いてトレーニングプログラムを開催することなどを目指したいと考えている。 日本国内のコーチングの現状把握については、研究初年度に500名以上のコーチの協力を得て調査を実施し、その結果を学会および論文およびウェブ上でも公開した。このときに得たデータを基に、コーチングの尺度開発を行い、CCSES(コーチングコンピテンシー自己効力感尺度)として2015年に完成させた。 以上の成果は、学会および論文発表以外に、実務家対象の講演会、研究会などにおいても紹介し広く社会に還元している。
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