研究課題/領域番号 |
25380965
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
小野 久江 関西学院大学, 文学部, 教授 (40324925)
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研究分担者 |
辻井 農亜 近畿大学, 医学部, 講師 (90460914)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 心理学的介入 / ストレスコーピング / 自殺予防 / 若年者 / 光トポグラフィ / 自律神経バランス / 対人関係カウンセリング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、若年者のストレスコーピング能力の向上を心理学的介入で図り、広い意味での若者の自殺予防につなげることにある。方法は、20歳代・30歳代の健常人30名を対象とし、対人関係カウンセリングまたは通常の支持的カウンセリングの2種を行い、それぞれの心理学的介入の有用性の相違を調べる。評価法としては、心理検査(質問紙など)と生理検査(自律神経活動バランス、光度トポグラフィ)の2種類の方法を用いている。 研究の進展状況としては、2014年度までに、17名(平均年齢±標準偏差:21.2±1.3歳、男性4名、女性13名)を対象として研究を行った。17名のうち、8名に対人関係カウンセリングを、9名に支持的カウンセリングを行った。その結果、うつ状態を評価するSDSの得点は、対人関係カウンセリング群で1.63点減少、支持的カウンセリング群で0.22点減少した。また、ストレスコーピングを評価するCISSの課題優先対処得点は、対人関係カウンセリング群では1.88点増加、支持的カウンセリング群では逆に1.22点減少した。生理検査としては、光度トポグラフィ検査において、症例検討レベルではあるが、前頭葉の酸素化ヘモグロビン変化量は全チャンネルで増加し、特に左右の眼窩前頭前野で増加が強く見られる傾向が示された。 以上より、現段階では、2種のカウンセリング法の有用性に統計学的な有意な差は認められていないが、対人関係カウンセリングの方がうつ状態の改善効果が高いこと及び論理的なストレス対応法である課題優先対処を身につけやすい可能性が示された。今後、症例数を約30例まで増加して引き続き検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度までに17名の被験者を対象として研究を行った。17名に加えて、10名の協力者の内諾も得られている状況であり、2015年度の前半には予定していた30名での研究が終了できると考える。さらに、2014年7月に追加導入した光トポグラフィWOT100を用いた測定も順調に進んでおり、当初より予定してた光トポグラフィHOT121のデータとともに、光トポグラフィのデータが計画以上に得られている。また、学生相談などにおいて、対人関係カウンセリングを用いた相談の導入もできており、研究成果の臨床場面への応用も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2015年6月に、中間報告として17名の被験者から得られたデータを、The 28th World Congress of the International Association for Suicide Prevention(Montreal Canada)(受理済み)、並びに2015年7月の第12回日本うつ病学会総会(東京)(受理済み)にて報告する。 2015年8月までに、予定被験者数30名での研究実施を終了予定である。なお、現時点での被験者が大学生を中心とした被験者となっているため、今後は30歳代社会人の被験者をより積極的に募集したいと考えている。その後に、最終データの解析を行い、2016年度の国内学の学会で最終結果を発表するととともに学術雑誌に論文を投稿する。さらに、研究室のホームページおよびブログで一般向けにも研究成果を公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度7月に所属する大学の経費でウェアラブル光トポグラフィー刺激提示システム(WOT-100-10P-SP)を導入した。このシステム内には、科研経費で購入予定であったパーソナルコンピュータ・モニターに相当するコンピュータシステムが含まれているため、科研費の物品費の支出が少なくなった。 研究成果の発表として2014年度の国内学の学会での発表を予定していたが、2015年6月16日から20日にカナダのモントリオールで開催されるThe 28th World Congress of the International Association for Suicide Prevention等での発表としたため、2014年度の旅費およびその他(英文校閲料など)の使用が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度には、データ解析のために必要なコンピューターならびに解析プログラム等を購入する予定である。旅費は、2015年6月にカナダで開催されるThe 28th World Congress of the International Association for Suicide Prevention、および7月に東京で開催される第12回うつ病学会等での研究成果発表や情報収集のために使用する予定である。 人件費・謝金としては、被験者への謝金とともにデータの解析のための統計専門家等への謝金を支払う予定である。その他の費用からは、英文校閲料、雑誌投稿料、結果の公表のための講演会やHPの立ち上げなどを予定している。
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