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2013 年度 実施状況報告書

遺族のニーズのアセスメントとそれに基づく心理社会的介入に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 25380966
研究種目

基盤研究(C)

研究機関関西学院大学

研究代表者

坂口 幸弘  関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (00368416)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワード死別 / 悲嘆 / 遺族 / アセスメント / ホスピス・緩和ケア病棟
研究概要

今年度は、ホスピス・緩和ケア病棟での遺族のニーズのアセスメントと心理社会的介入の実情を明らかにするため、訪問調査を実施した。調査対象は、全国のホスピス・緩和ケア病棟の看護師長を対象に調査依頼を行い、訪問調査の同意が得られた50施設のうち、追悼会を含む一定の遺族ケアを実施しており、再度の依頼に協力を得られた12施設である。調査方法は、半構造化面接である。回答は看護師14名、MSW1名の計15名から得られた。1施設において対象が2名となった施設もあったため、施設数と対象者数は異なる。病床数は平均20.8床であり、年間の平均死亡者数は147.5名であった。平均在院日数は39.7日であった。
現在行っている遺族ケアへの評価に関して、おおむね及第点(60点/100点満点)以上であったが、高得点ではない施設も多く、必ずしも現状に満足しているわけではないことが示唆された。追悼会の課題として、不参加遺族への懸念が挙げられた。遺族ケアの実施上の問題や障害に関しては、12施設中9施設が「時間的に余裕がない」ことを挙げていた。
遺族のニーズや悲嘆の度合いをアセスメントする基準は、どの施設においても設けられていなかった。遺族のニーズは、スタッフの経験や感覚に基づいて判断されているとのことであった。また、死別から長期間を過ぎても悲嘆が強い遺族に対しては、病院として必ずしも積極的なアプローチが行われていないことも示された。
今年度の結果から、限られた人的資源や時間のなかで、ホスピス・緩和ケア病棟での遺族ケアは実施されており、スタッフの負担は大きく、遺族への対応にも限界があることが示された。遺族のニーズに対するアセスメントの基準は現在のところ明確化されておらず、アセスメント方法の開発は現状の中でより効率的で有効な遺族ケアを行うための一助となるものと思われる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度の研究目的であった「研究1 遺族のニーズやリスク、および遺族への介入に関する現状把握」に関して、ホスピス・緩和ケア病棟を対象とした訪問調査は実施することができた。また文献調査についても、随時資料を収集し、これまでの研究知見の整理を着実に進めている。一方で、協力機関との調整が進まず、遺族を対象とした調査は実施できていない。調査協力が得られ次第、質問紙もしくは面接による調査を実施する予定である。

今後の研究の推進方策

次年度以降、「研究2 遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメント方法の開発」を実施するため、遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメントツールを作成し、アセスメント方法の信頼性と妥当性を検証する。この研究を進めるにあたって、最大の課題は医療機関の協力であり、すでに複数の医療機関の関係者に打診している。本研究への関心は高く、協力への好感触は得ているが、組織としての正式な応諾にはまだ至っていない。院内の倫理委員会で厳しい判断が下される可能性もあり、予断を許さない状況である。協力を得られた施設においてはすみやかに調査を実施するとともに、今後も研究協力が得られる医療機関の開拓に鋭意努力する予定である。

次年度の研究費の使用計画

今年度の支出額が当初予定よりも大幅に少なかった主たる理由は、今年度の研究計画の一つであった遺族を対象とした調査を実施できず、それに伴う印刷費や郵送費等の支出がなかったためである。また訪問調査に関して、交通費が他の研究費等から支出されたため、当該研究費からの支出が不要であったことも、今年度において残額が生じた理由の一つである。
今年度使用しなかった助成金の使用計画として、今年度実施できなかった遺族を対象とした調査を予定している。調査方法は質問紙調査もしくは面接調査とし、それに伴う印刷費、郵送費、交通費、謝金等の支出を見込んでいる。また、次年度分として請求した助成金については、当初の予定通り、遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメント方法の開発に向けて、協力機関との研究打ち合わせ旅費及び調査旅費に当てる。なお、全国に点在する機関や団体にも協力依頼を行うため、実際にどの地域への旅費が必要となるかは現時点では不明である。調査の実施にあたっては、調査協力者への謝金や、調査用紙の印刷費および郵送費が必要である。加えて研究資料の関連して、死別に関連する書籍の購入費用や、訪問調査時の資料記録のためのビデオカメラの購入費が必要である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 悲嘆は病気か?~DSM-5と悲嘆の医学化への懸念~2013

    • 著者名/発表者名
      坂口幸弘
    • 雑誌名

      老年社会科学

      巻: 35(3) ページ: 384-390

  • [雑誌論文] ホスピス・緩和ケア病棟で近親者を亡くした遺族の複雑性悲嘆、抑うつ、希死念慮2013

    • 著者名/発表者名
      坂口幸弘・宮下光令・森田達也・恒藤暁・志真泰夫
    • 雑誌名

      Palliative Care Research

      巻: 8(2) ページ: 203-210

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ホスピス・緩和ケア病棟で死亡した患者の遺族における遺族ケアサービスの評価とニーズ2013

    • 著者名/発表者名
      坂口幸弘・宮下光令・森田達也・恒藤暁・志真泰夫
    • 雑誌名

      Palliative Care Research

      巻: 8(2) ページ: 217-222

    • 査読あり
  • [学会発表] わが国のホスピス・緩和ケア病棟における遺族ケアの現状と課題 -この10年間での変化-

    • 著者名/発表者名
      坂口幸弘
    • 学会等名
      第18回日本緩和医療学会総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
  • [学会発表] ホスピス・緩和ケア病棟における遺族ケアの課題~看護師長及び遺族ケア担当者への面接調査~

    • 著者名/発表者名
      坂口幸弘・永山彩花
    • 学会等名
      第37回日本死の臨床研究会年次大会
    • 発表場所
      くにびきメッセ(松江市)

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公開日: 2015-05-28  

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