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2014 年度 実施状況報告書

遺族のニーズのアセスメントとそれに基づく心理社会的介入に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 25380966
研究機関関西学院大学

研究代表者

坂口 幸弘  関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (00368416)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワード死別 / 悲嘆 / 遺族 / アセスメント
研究実績の概要

今年度は、文献調査研究や現状把握研究を進める一方で、新たに2つの調査研究を実際に行い、遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメント方法として現在開発中のBereavement Risk Assessment Tool(BRAT)の日本語訳版を試行的に実施した。
一つ目の調査研究は、精神疾患患者が自殺した場合の遺族のリスクアセスメントについて、精神科病院に勤務し、5年以内に担当患者の自殺既遂を経験した精神保健福祉士6名の協力を得て行った。自殺した患者の年齢は30代が3名、40代が1名、50代が2名であった。病名は統合失調症が5名、うつ病が1名であった。患者のキーパーソンである遺族のBRATによるアセスメント結果として、トータルリスクスコアは46~132点で、平均75.5点であった。5段階のリスクレベルのうち、レベル5(64点以上)が4名、レベル4(16-63点)が2名であり、レベル3以下は見られなかった。自殺した精神疾患患者の遺族においてもリスクスコアにばらつきがあり、レベル4と5の弁別がされており、BRAT日本語訳版の汎用性が示唆された。
もう一つの調査研究は、葬儀社が主催する遺族のサポートグループに参加した遺族のリスクアセスメントである。運営スタッフの協力を得て、13名の参加遺族に関してBRATによるアセスメントを行った。遺族の背景として、故人の続柄は配偶者が9名、親が3名、子が1名であった。結果として、トータルリスクスコアは0~21点で、平均3.4点であった。5段階のリスクレベルのうち、レベル4(16-63点)が2名、レベル2(1-3点)が8名、レベル1(0点)が3名であった。故人の年齢は40~93歳で、平均74.5歳であった。今回の結果から、当該サポートグループの参加遺族の全体像について議論することは早計であるが、リスクレベルは全体的に低い一方で、異なるリスクレベルの遺族が混在していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度の研究目的であった「研究2 遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメント方法の開発」に関して、試行的ではあるものの、二つの調査研究を実施することができた。しかし、中心的な研究である遺族を対象とした調査は未だ実施できていない。「研究1 遺族のニーズやリスク、および遺族への介入に関する現状把握」に関して、昨年度の調査結果を分析するとともに、ホスピス・緩和ケア病棟以外の施設や団体を対象とした調査の準備を進めている。

今後の研究の推進方策

今年度に引き続き、次年度も「研究2 遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメント方法の開発」を実施するため、Bereavement Risk Assessment Tool(BRAT)の日本語訳版の信頼性や妥当性、ならびに有用性について検討を行う。今後は遺族を対象とした調査に向けて、研究協力が得られる医療機関等の開拓に鋭意努力する予定である。今のところ一部の機関からは協力に前向きな回答を得ているものの、具体的な調査の実施にまでは至っていない。なお研究2と並行して、研究1の一環としてホスピス・緩和ケア病棟以外の施設や団体を対象に遺族のニーズや介入の現状把握調査も実施する予定である。

次年度使用額が生じた理由

今年度の支出額が当初予定よりも大幅に少なかった主たる理由は、昨年度と同様、今年度も研究計画の一つであった遺族を対象とした調査を実施できず、それに伴う印刷費や郵送費等の支出がなかったためである。また2つの調査研究に関して、交通費が他の研究費等から支出されたため、当該研究費からの支出が不要であったことや、調査協力者のご厚意で謝金が不要であったことも、今年度において残額が生じた理由である。

次年度使用額の使用計画

今年度使用しなかった助成金の使用計画として、今年度実施できなかった遺族を対象とした調査と、施設や団体を対象とした現状把握の新たな調査を予定している。調査方法は質問紙調査もしくは面接調査とし、それに伴う印刷費、郵送費、交通費、謝金等の支出を見込んでいる。また、次年度分として請求した助成金については、当初の予定通り、遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメント方法の開発に向けて、協力機関との研究打ち合わせ旅費に使用する。なお、全国に点在する機関や団体にも協力依頼を行うため、実際にどの地域への旅費が必要となるかは現時点では不明である。調査の実施にあたっては、調査協力者への謝金や、調査用紙の印刷費および郵送費が必要である。加えて研究資料として、死別に関連する書籍を購入する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Changes experienced by and the future values of bereaved family members determined using narratives from bereavement life review therapy2015

    • 著者名/発表者名
      Ando M. Sakaguchi Y. Shiihara Y. Izuhara K.
    • 雑誌名

      Palliative and Supportive Care

      巻: 13 ページ: 59-65

    • DOI

      10.1017/S1478951513000990

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Universality of Bereavement Life Review for Spirituality and Depression in Bereaved Families2014

    • 著者名/発表者名
      Ando M. Sakaguchi Y. Shiihara Y. Izuhara K.
    • 雑誌名

      American Journal of Hospice and Palliative Medicine

      巻: 31 ページ: 327-330

    • DOI

      10.1177/1049909113488928

    • 査読あり
  • [学会発表] NICUの小児科医からみた遺族ケアのニーズと課題2014

    • 著者名/発表者名
      坂口幸弘・永山彩花
    • 学会等名
      第38回日本死の臨床研究会年次大会
    • 発表場所
      別府国際コンベンションセンター(別府)
    • 年月日
      2014-11-02
  • [学会発表] 精神科病院での患者の自殺が精神保健福祉士に及ぼす心理社会的影響2014

    • 著者名/発表者名
      永山彩花・坂口幸弘
    • 学会等名
      第38回日本死の臨床研究会年次大会
    • 発表場所
      別府国際コンベンションセンター(別府)
    • 年月日
      2014-11-01

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公開日: 2016-05-27  

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