本研究の目的は、遺族のニーズやリスクのアセスメントに関して、1)現状の把握、2)アセスメント方法の開発、3)介入プログラムの開発と効果の検証である。 現状把握に関しては、ホスピス・緩和ケア病棟への訪問調査を行った。遺族のニーズやリスクはスタッフの経験に基づいて判断されており、明示的な基準によるアセスメントは行われていなかった。 アセスメント方法に関しては、研究代表者らが開発中のBereavement Risk Assessment Tool(BRAT)の日本語訳版を用いた調査研究を実施した。葬儀社調査では、毎月開催のサポートグループに参加した遺族延べ217名のアセスメントを行い、リスクレベルは全体的に低い一方で、専門職による介入が必要な遺族も混在していることが示された。専門看護師等を対象とした意識調査では、回答者の81.3%がアセスメントの必要性を認識し、75.0%はBRATを有用なツールと考えていた。 介入プログラムに関しては、葬儀社と豊中市保健所にて実施した。葬儀社では、サポートグループ参加遺族を対象に評定を行った結果、リスクレベルの低い遺族においても一定の介入効果が示された。豊中市保健所との共同研究として、グリーフケア事業(講演会、わかちあいの会、リーフレットの作成・配付)を継続的に実施した。わかちあいの会参加者の8割以上に大うつ病性障害の疑いが認められ、会はリスクの高い遺族への有益な支援の受け皿となっているといえる。一方、リーフレットは死亡届提出時に市民課にて配布することで、遺族の潜在的なニーズへの有用なアプローチとなり得ることが示唆された。 本研究の成果として、遺族のリスクやニーズのアセスメントに注目し、それに応じた遺族への介入の必要性と可能性を示すことができたといえる。いずれの研究もまだ萌芽的な域を出ないが、質の高い遺族支援体制の構築につながるものと期待される。
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