研究課題/領域番号 |
25380969
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
難波 愛 神戸学院大学, 人文学部, 講師 (90368746)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 不登校 / 合宿プログラム / 心理的コミュニティ / 家族支援 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、不登校状態にある児童および生徒の心理状態の改善と社会性の成長に必要な環境開発のため、自然体験を柱とする宿泊プログラムを実施し、不登校状況の継時的な変化を多角的に調査することによって、不登校状態の解決に必要な要素を明らかにすることである。本研究の意義は、不登校児の変化のみならず、保護者、ボランティア、運営スタッフの四者を対象とし、自己記述式の調査と観察評価の掛け合わせによって、相互の関係性を定量的に把握し、不登校状態改善の機序の理論化を行い、不登校問題の解決に必要な要因の抽出と社会に向けての提言を目指すことにある。 平成27年度においては、実施主体が行政から民間に移行して2年目となり、新たな体制でのプログラム実施も軌道に乗った状態で調査を実施することができた。 調査は、児童生徒のべ64名、保護者のべ37人を対象として、質問紙形式での調査を行った。児童生徒には、プログラム前後の「気持ち」「心の温度計」「終了路の気持ち」を定量的に測定する他、ボランティアによる児童それぞれの状況が記録された。保護者に対しては、「プログラム」前後の「気分」「ふりかえり」を定量的に把握する他、「親の変化」「子どもの変化」について自由記述でデータを取得した。 結果は、児童らは事前よりも事後の方が気持ちがポジティブになり、気持ちのエネルギーが増加したことが確認された。保護者においては、本事業によって「気分状態」が改善され、子どもの新たな側面を発見すること、親同士の繋がりが形成されたことが確認された。 本研究の世論への発信として研究報告書と小冊子を作成し、支援機関や学校に送付した他、学会発表における聴衆にも配布し、研究結果の周知を実施した。 本研究の対象事業の過去と現在の対象者と保護者の集会を開催し、過去の参加者から現在どういった生活をしているのかを語ってもらうことが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度においては、当初予定通りの調査および、成果物の発行をみることができた。順調に運ばれた理由として、本研究の調査が3年目を迎え、手順が事業者や調査者の間で共有されたこと、事業自体が順調に運営されたこと、および事業者と調査実施者が連絡を密に取り合って、調査に漏れがないよう協力したことが挙げられる。 研究報告書の作成においては、調査対象者からも原稿を執筆してもらうなど、当事者の声を盛り込めたことが特徴である。また、小冊子においては一般市民を対象とした内容とし、不登校状態にある家族や支援関係者に、本研究の対象事業である宿泊プログラムの情報提供する機会を得られたと考える。 本事業の対象者と卒業生を対象とした集会を開き、不登校経験者が現在どのような生活を送り本事業をどのように体験したのかについて、現在の参加者に語ってもらうことができたことも大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度においては、平成27年度までに予定していたほぼ全ての調査が終了したこと、および一般市民への広報活動としての冊子の刊行を含め、市民に対する周知を実施することができたことを踏まえて、さらにこの成果を国際学会において発表し、海外の研究者とその成果を発表すると共に、海外における不登校児童生徒への支援について、情報収集する機会を得ることを予定している。 従って、研究期間を1年延長(申請許可済み)し、国際学会における発表を本年度の目的と本研究の広報活動の場と位置づける予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年度から開始した研究は、平成27年度までの3年間、当初予定通りに進み、各年度における研究成果の発表は次年度の学会にて発表し、その成果の公表に努めてきた。研究活動3年目に当たる平成27年度分の研究についても、十分な成果を得られたが、これを発表するための費用が必要であることと、同時にこれまでの不登校研究の総まとめの位置づけとして、国際学会で研究成果を発表することが重要であると考えられる。このことによって、海外における不登校研究者との交流および、我が国における不登校支援の実情の情報交換が進むと考えられるため、平成28年度に1年間予算を繰り越し、国際学会発表の費用に充てこととする。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年7月に横浜市のパシフィコ横浜で開催される国際心理学会議(ICP2016)において、研究協力者と連名で、ポスター発表することを予定している。本会議への参加には、一人につき55000円の参加費が必要である。繰り越し予算は、連名発表者5名分の参加費と横浜までの往復交通費、宿泊費に充てる予定であり、この発表によって予算をほぼ使い切る予定である。
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