研究概要 |
保護者の「メンタルヘルスリテラシー」を高めようとする試みは,児童・思春期の子どもたちの心理的問題に関する支援の1つの方法として,重要ではないかと考える。また保護者がこうした力をつけることは,子どもたちの心理的問題への早期発見のみならず,保護者自身のメンタルヘルスの維持・増進にも繋がると思われる。しかしながらこれまでは,保護者のメンタルヘルスリテラシーに関する一般化できる情報は乏しかった。そこで本研究では,保護者のメンタルヘルスリテラシー調査を実施し,保護者の心理教育的支援について検討することを目的とした。 調査票は国際比較可能なもので,調査票作成者のA.F. Jorm氏の許可を得て日本語版を作成した。調査実施にあたっては,作成した調査票を更にインターネット仕様にかえ,全国にモニターを有し,インターネット調査に実績のあるA社の協力を得て,A社のモニター登録者の中から全国7区分の構成比を配慮し,47都道府県の保護者1,200名(男女,各600名)を事例別に均等になるように回収した。平均年齢43.8歳(SD=6.02)。 主な結果として,(1)事例の適切な認識度が低調であったこと,(2)支援について,事例の別を問わず「全く自信がない」の回答割合が高かったこと,(3)援助を求めることについて「不安や心配」の回答割合が高かったこと,(4)「助けになる」と思う支援方法として,“話を聴く”“一緒に何か取り組めることがないか話す”といった回答割合が高かった一方で,一歩踏み込んだ支援については低調であったこと,(5)「役に立つ」と思う援助として,専門家への一定の期待と同時に,インフォーマルな資源が高く評価されていたこと,(6)メンタルヘルスに関する情報取得割合が低調であったことなどが明らかになった。 こうした結果を踏まえ,保護者の心理教育的支援について更に検討していく必要があると考えた。
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