RSVP課題をハトに用いた前年度までの研究によって、ハトはターゲットに用いた画像を約80秒で視覚的に処理し認識できることが分かった。 また、その後の詳細な分析によって、妨害刺激を呈示しない場合は、ターゲット呈示時間を17ミリ秒に短縮しても、チャンスレベルより有意に高い正答率が得られたことが判明した。この結果は、ヒトと同様の視覚的維持がハトでも生じていることを示唆している。 視覚的維持をRSVP事態で検証するために、ターゲットと妨害刺激のSOAを80ミリ秒に固定し、その中でターゲット呈示時間を組織的に変化した(残りの時間はブランク)。視覚的維持が起きれば、ターゲットが消えた後も次の画像が呈示されるまでのブランク時間を利用して処理が可能なため、ターゲット呈示時間にかかわらず一定の高い正答率が得られるはずである。実験の結果、ターゲット呈示時間に有意な効果は認められず、ハトも視覚的維持を行っていることが支持された。 前年度明らかにできなかったカテゴリ効果を更に見るために、新しいハトを用いて、妨害刺激が突然新奇なカテゴリになった場合の効果を見た。新奇カテゴリ導入直後は、新奇性による妨害効果がみとめられたが、訓練を続けると逆に促進効果が見られた。訓練によってターゲットと妨害刺激のカテゴリ弁別が起きた結果、ターゲット選択的な視覚処理が行われたと考えられる。なお、この実験は、協力研究者の千葉大学准教授・牛谷智一によって実施された。 今年度後半では、前年度までの成果を英語論文として執筆を進めた。
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