申請書に提案した「機能的磁気共鳴画像法 (fMRI) 」によるデータ収集、並びにその実験結果を反映させたリスクコミュニケーション技法選択実験は、ほぼ想定された目的を達成したと言える。平成27年度は、Yamagishi (2015)の学術論文並びにYamagishi and Yang (2015)の国際学会発表という成果を重ねた。今後、本課題が確立したリスクコミュニケーション技法の知見を、より巷間に議論される事の多い現実のリスク事態に応用する事が望まれる。例えば、平成28年4月に発生した熊本地震は、本報告書作成時点(同年4月下旬)今なお活動を続けているが、この事態のさらなるリスク発展を予想するためのボキャブラリとして、どのような用語選択、あるいはリスク事象の図的表現が適切(即ちリスク情報の受け手が誤解や矛盾のないやり方で地震リスクの危険度を評価できる)かについて、本課題からは具体的な提言を提供する事が出来る。このような提言は、一般市民のリスクリテラシー向上に加え、政策提言としても有効性が期待される。4月26日、内閣総理大臣安倍晋三は、熊本地震に対応する補正予算案の早期成立のため野党8党の党首と個別に会談し、予算案の内容について意見を聞くほか、与野党の幹事長・書記局長会談で、国会審議への協力を求めた。このようなリスクコミュニケーション場面で、意見交換の場にある双方にとって歪みのないリスク事態の把握を促進するため、有効なコミュニケーション技法を、本研究は提言可能である。
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