研究課題/領域番号 |
25380979
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
漁田 武雄 静岡大学, 情報学研究科, 教授 (30116529)
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研究分担者 |
漁田 俊子 静岡県立大学短期大学部, その他部局等, 教授 (40161567)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 文脈依存記憶 / 環境的文脈 / 再認 / ビデオ文脈 / BGM文脈 / 匂い文脈効果 / アウトシャイン説 / ICE理論 |
研究実績の概要 |
1.ビデオ文脈を用いた再認弁別実験をさらに継承発展させた。今年度は,手がかり負荷1と18の条件に加えて,手がかり負荷6の条件を加えて,再実験を行った。その結果,アウトシャイン説とICE理論のいずれで説明できるかに,手がかりの負荷が関わっていることを示唆する結果を得た。 2.ビデオ文脈の研究成果に視覚文脈の成果を加えることで,コンピュータ(人工的 artificial)文脈としての理論化を方向づけている。これに対して,場所,BGM,匂いなどグローバル文脈とされてきたものは,包括(ambient)あるいは自然文脈として分類することが可能である。ビデオ文脈が,局所的文脈とグローバル文脈の両方の機能を果たしうることから,局所的文脈/グローバル文脈の分類をそのまま当てはめることができない。 3.グローバルな環境情報の文脈としてBGM文脈と匂い文脈を操作した実験を行った。BGM文脈では,複合場所文脈の結果と同様に,記銘材料の有意味性が低いほど文脈依存再認が生じやすいという結果を得た。一方,匂い文脈では,学習時間効果と文脈依存再認の関係を調べた。その結果,4秒条件でもアウトシャイン効果が生じず,有意な文脈依存再認が生じた。匂い文脈の結果は,複合場所文脈やBGM文脈の結果とは異なっている。この点をさらに解明していくことが,グローバル文脈における文脈依存再認機構の解明に有効といえる。 3.(1) 匂い文脈依存効果の研究成果を国際誌(Memory & Cognition)に掲載した(平成26年4月)。(2) 環境的文脈依存効果についてのBook Chapterが刊行された(平成26年7月)。(3) 人間の随伴性判断に関する論文を国内紙(認知心理学研究)に刊行した(平成26年8月)。(4) 応用脳科学コンソーシアムで招待講演を行った(平成27年3月)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画に基づいて,実験を実施したこと炉までが予定通りである。けれども,以下の2点は,当初の予定以上に研究が進展していることを示している。 1.ビデオ文脈の研究成果は,予想以上であり,視覚文脈の成果とあわせて,コンピュータ(人工的 artificial)文脈としての理論化を方向づけるに至っている。 2.さらに,(1) 査読付き国際誌1編と査読付き国内紙1編を刊行したこと,1年間で刊行したこと,(2) これまでの成果を評価されて,国際図書のBook Chapterを発表したこと,および招待講演を行ったこと。
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今後の研究の推進方策 |
今後も,当初の予定通りに進めていく。 1.ビデオ文脈の場合の文脈依存再認のメカニズムについて,アウトシャイン説とICE理論のどちらで適切に説明可能であるかを,実証的に確認することを中心線とする。できれば,理論化を行うことも視野に入れている。 2.これまでの実験結果から,環境的文脈依存再認の機構について,以下のような説明が浮かび上がっている。(1) グローバル環境的文脈(場所,BGM,匂いなど)は,アウトシャイン説によって説明できる。(2) 局所的環境的文脈(単純視覚文脈,背景写真,背景色)の場合,手がかり過負荷が生じるとき,ICE理論で説明できる。手がかりが過負荷にならないとき,アウトシャイン説で説明できる。(3) ビデオ文脈の場合,手がかり負荷が大きく(6以上),ブロック提示する場合,ローバル文脈として機能する可能性が高い。ランダム提示の場合は,まだ未検討であり,今後の課題である。(4) また,局所的文脈の場合,以下の法則が成り立つと予想している。これを実証していくのが,今年度の課題である。 (a) 旧文脈の数および旧文脈下で提示される旧項目数がおおむね6-7個以下の時,符号化特殊性原理で説明可能である。 (b) 旧文脈数および旧文脈下で提示される旧項目数がそれ以上の時,ICE理論で説明可能である。
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