研究実績の概要 |
ビデオ文脈を用いた再認弁別実験をさらに継承発展させた。手がかり負荷18条件で,学習時間4秒では,Hit,FA, CRSのすべてで文脈依存効果が生じなかった。この結果は,ICE理論の説明に合致しない。ICE理論では,HitとFAの文脈依存記憶が相殺されて,再認弁別の文脈依存効果が消えると予測する。これに対して,エピソード想起説では,文脈依存効果がアウトシャインされると,Hit,FA,CRSのすべてで文脈依存効果が消失する。そこで,4秒間のビデオで3項目を連続提示することで,学習時間を1/3に短縮した。その結果,Hitと再認弁別で文脈依存効果が生じた。この結果は,エピソード想起説を支持している。さらに,同種のビデオ文脈を10数回連続提示すると,グローバル文脈と機能することを示している。 次に,背景写真文脈の実験を行った。学習時間を4秒とし,手がかり負荷を1と6とした。その際,手がかり負荷6では同じ背景写真を連続提示した。その結果,手がかり負荷1では,Hit,FA,CRSのすべてで有意な文脈依存再認が生じたが,負荷6ではすべてで生じなかった。そこで,ビデオ文脈と同様に,提示速度を1/3に変更したが,やはり文脈依存再認が生じなかった。この結果は,背景写真は連続提示すると,文脈手がかりとして機能しなくなることを示している。これは背景写真(Isarida & Isarida, 2007)と同様の結果であり,背景色や背景写真などの視覚文脈は,局所的文脈としてのみ機能することを意味している。 BGM文脈依存記憶の研究成果をQuarterly Journal of Experimental Psychology誌に,またビデオ文脈依存記憶に関する研究成果を基礎心理学研究に投稿し,それぞれ採択された。さらに再認判断の正確さとその確信度に関する成果を,認知心理学研究に掲載した。
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