研究課題
本研究の目的は、「音韻的作動記憶における音韻系列の保持メカニズム」と「長期音韻知識」の相互作用を、音韻のタイミング制御を軸にモデル化することにある。平成25年度は、記銘すべき非単語に含まれるバイモーラ頻度(日本語においてある2つの言語音が連続して出現する頻度)と、各モーラの提示タイミングを操作した直後系列再生実験によって、音韻的作動記憶における長期音韻知識の運用には、提示タイミングが重要であることを示した。自然言語の特徴を用いた材料には多くの要因が交絡すことをふまえ、平成26年度には、実験室において長期的知識を形成し、種々の要因を統制した材料を作成することで、問題の解決を試みた。具体的には、非単語を用いたヘッブ反復効果実験によって、音韻的作動記憶の長期音韻知識形成への貢献を検討した。H27年度には、ヘッブ反復の操作に加え、リスト内の各系列位置における非単語の生起頻度を長期間の学習中に操作し、系列再生へのその影響も検討した。その結果、ヘッブ反復学習とは別に位置生起頻度の効果が学習の結果現れてくることが示された。H28年度は、これらの成果を、長期音韻学習の2要素モデルとして国際心理学会におけるシンポジウムで報告するとともに、提示タイミングを操作したヘッブ反復実験を実施し、位置生起頻度の学習に与える提示タイミングの効果を検討した。その結果、提示タイミング以外に、参加者個人が自己生成するタイミングが学習パターンに大きな影響を与えることが判明し、音韻系列の長期学習と保持メカニズムが複合的かつ多層的であること、また、そうした自発的タイミング制御を心理学モデルに組み込むことの重要性が示された。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件)
Journal of Memory and Language
巻: 94 ページ: 235-253
http://doi.org/10.1016/j.jml.2016.11.007