研究課題/領域番号 |
25380982
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
宮谷 真人 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (90200188)
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研究分担者 |
森田 愛子 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (20403909)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 認知制御 / 抑制 / 競合適応効果 / ストループ効果 |
研究実績の概要 |
前年度までに実施した研究の結果,No-Go電位に反映される感情処理が抑制機能に及ぼす影響が,実験間で一貫しない場合があることがわかった。その原因を探るため,個人特性が抑制機能に影響を及ぼす可能性について,行動指標を用いて検討した。具体的には,ストループ課題における行動抑制を反映すると考えられる競合適応効果(情報間の競合の検出により後続する刺激の処理がバイアスを受け,パフォーマンスが変化する現象,Botvinick et al., 2001)が,報酬接近傾向および罰回避傾向(BIS/BAS尺度で測定)と関連するかどうかを検討した。 成人19名 (うち女性10名,平均22.1歳) が実験に参加した。灰色の画面中央に赤,青,黄,緑のいずれかの色で描画された色名を示す文字 (あか,あお,きいろ,みどり) を呈示した。参加者は,刺激の描画色について,対応する4つのボタンを左右の人差し指と中指で押し分けて反応した。描画色と文字の意味が一致(例:赤い色で書かれた“あか”)か不一致(例:赤い色で書かれた“あお”)かによって適合性を操作した。前試行が一致試行である時のストループ効果(不一致条件の反応時間から一致条件の反応時間を引いた値)から前試行が不一致試行のときのストループ効果を引いた値を競合適応効果の指標とした。その結果,競合適応効果の程度には個人差が存在すること,BIS/BASの下位尺度である「刺激探究」尺度と正の相関があることがわかった。抑制機能には報酬系に起因する個人差があり,新規な刺激や報酬刺激に対して衝動的に思いつきで接近しやすい傾向の高い人ほど,競合適応効果が生じやすい可能性があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
No-Go電位に反映される感情処理が抑制機能に及ぼす影響が,実験間で一貫しない場合があることがわかったため,その原因を調べるための実験を優先して実施し,本研究で事前に予定していた実験(複数の抑制検討課題,複数のERP指標による抑制機能の異同の検討)が年度内に完了しなかった点がマイナスである。その一方で,認知制御における抑制機能について,従来の研究で指摘されていたワーキングメモリ容量以外にも,生理学的基盤が明確な報酬系に基づく個人差が存在することが示され,今後の研究方向に関する示唆が得られた点はプラスである。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究成果のうち,感情刺激を用いたフランカー課題で得られた2つの結果(①ターゲットとフランカー刺激の一致性の効果がN2に出現しなかった,②LRPにおいて不一致刺激に対するご反応の抑制を反映する陽性シフトが出現しなかった,これらは文字等の刺激を用いた課題でロバストに観察される現象とは異なる)が,感情刺激を用いたことによる再現性のある結果なのか,他の何らかの原因による偶然の結果なのかを確かめる。その結果を踏まえて,抑制機能を検討する複数の課題(Go/Nogo課題,フランカー課題等)で複数のERP成分(Nogo電位,N2,LRP等)を記録し,それぞれの成分に反映される感情刺激の効果を比較するための実験を実施する。
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