平成26年度に引き続き,認知制御における抑制機能の個人差をもたらす要因について,競合適応効果(CAE,ある試行で競合を経験すると,次の試行で競合の効果が小さくなること)の観点から検討した。ストループ課題の修正版(文字の描画色―赤,青,黄,緑の4色―と一致する反応ボタンを左右の人差し指と中指を使って押し分ける)を遂行中の成人19名から脳波を記録し,当該試行の競合の有無とその試行の直前の試行における競合の有無を組み合わせた4条件別に,片側性運動準備電位(LRP,刺激同期と反応同期の2種類)を算出した。 行動測度上,有意なストループ競合効果が得られたが,CAEは観察されなかった。しかし,参加者別のCAE量とLRPの潜時および振幅との関連を調べたところ,刺激同期LRPとCAEの相関が有意であり,一致試行で正反応への運動準備電位が大きく出現した参加者ほど,前試行の競合の影響による反応遅延の程度が大きかった。
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