平成25-26年度に引き続き、6-7ヶ月児を対象とした2つの実験をおこなった。実験は、静岡県袋井市内の保健センターにおいて実施した。 実験1は、動く対象Aが静止する対象Bに向けて動き、接触すると対象Bが動き始める事象(衝突駆動事象)を刺激事象とする馴化-脱馴化法による実験であった。対象どうしの接触と静止した対象の始動の時空間的関係を操作し、因果的事象と非因果的事象を作成した。この実験の結果、調査対象となった乳児において、因果的事象と非因果的事象を区別していること、衝突駆動事象における原因と結果の関係を知覚していることが示唆された。実験2では、慣化刺激として、行為主体(長方形の対象)が対象A と対象B のうちの1つに接近・接触する事象を、テスト事象として、対象A と対象B の位置が入れ替えられ、行為主体の動く軌道もしくは目標となる対象が慣化事象から変化する事象を用いた。この実験の結果、乳児は、行為主体の動きの目標の変化にとくに注意を向けたことが示唆された。 さらに、実験1と実験2の両方を完遂した乳児のデータの分析を進め、両実験におけるパフォーマンスに関連があるかどうかを調べた。その結果、実験1において因果的知覚を示した乳児は、そうでなかった乳児に比して実験2におけるパフォーマンスがよいという弱い傾向があったことが示唆された。 今年度はさらに、成人女性を対象にコンピュータ画面上に上述の実験1で用いた衝突駆動事象を呈示し、それに対する注視反応をアイトラッキングシステムを用いて計測、分析する実験をおこなった。その結果、注視が集まる領域に刺激事象の因果性の有無による違いが見られ、そこに因果的認識が関係している可能性が示唆された。
|