本研究の目的は,近年のゲーム機やタブレットPCで利用可能になったNUI(natural user interface)と呼ばれる新しいセンサ技術を用いて,障害児者の認知機能を評価するとともに,彼らの成長を可視化できるような課題を開発し,障害福祉の現場における対象者の理解促進に貢献することである。NUIは,身体の一部を直接的にインタフェースとして利用することから,知的障害を含む様々な障害児者にも利用可能な課題を作ることができる。また,NUIを活用したゲーム的な課題であれば,障害児者が楽しみながら,保護者や施設職員などが対象者の認知機能の状態を評価・把握することが可能になる。さらに,楽しい課題であることにより,対象者の意欲を高め,繰り返し遊ぶ中でその認知機能の成長の様子を見える形でとらえること(成長の可視化)も可能になる。 最終年度である平成27年度においては,幼児や発達障害児の認知機能を評価するためのゲーム(モグラたたき,50タップ競争,電子版トレイル・メイキング・テストなど)を施設や放課後教室でゲーム・コーナーを開いて実践するとともに,肢体不自由児の支援施設で絵本の読み聞かせ時の子どもの視線運動をアイトラッカーで調べることで,通常の発達検査が使えない子どもの心理発達の状態を保護者や施設職員と共有する試みを継続した。また,顔や身体の動きをとらえることができるNUIを使って,離れたところから非接触に笑顔度を計測できるプログラムを開発し,それを使った笑顔検出ゲームや,ボディイメージを使って身体を動かす協調運動機能を評価するゲームを開発した。 また,これらの成果物を福祉機器展や障害児のホスピタル・プレイ,地域交流フェアなどに出展することで,障害児や障害者だけでなく,同様の認知機能の低下をもつ認知症高齢者の関係者にも広く知ってもらうための活動を行った。
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