研究課題/領域番号 |
25380996
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
荒生 弘史 広島国際大学, 心理科学部, 講師 (10334640)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 認知 / 注意 / 聴覚 / 事象関連電位 / 音声 / 自己名 |
研究概要 |
平成25年度は、自由度が高く容易な刺激作成のために、安価もしくはフリーの人工音声ソフトの中から、簡便性、明瞭性、呼びかけ刺激としての適切性を重視して候補を絞り、スピードやピッチの変更が可能であり、基礎的データ取得の際にも生かせるものを当初段階として活用することにした。単一刺激パラダイム(single-stimulus paradigm)は、各セッションごとに同一の刺激を適宜時間間隔を設定し呈示する方法である。複数の種類の刺激を呈示し、刺激間の間隔も通常比較的短いオッドボールパラダイム(oddball paradigm)とは対照的である。自己名や他者名に対するERP反応に特徴的な振る舞いが見られれば、各手法における自動的な概念処理の特色に関する知見が得られる可能性がある。さらには、単一刺激の方法では測定時間を短縮できる可能性があり、心的機能計測の負担軽減の面からも利用可能性の検討が望まれる。実験状況としても、ほぼ一定のペースで様々な名前が呈示されるオッドボールパラダイムの不自然さを多少改善できる可能性がある。これらの観点から、単一刺激パラダイムを用いて、自他名の対比とセッション間進行の効果を検討した。その結果、手持ちのデータにあるオッドボールパラダイムを用いたときよりも、自他名のコントラストは明瞭ではないものの、全般にN2、P3のピークがより明瞭になることがわかった。また、500ms程度以降の緩やかな陰性電位はセッションの進行にともない減衰傾向を示した。同一の名前のピッチのバリエーションの効果は顕著ではなかった。また少数事例ながら、同じ人工音声作成法を用いてオッドボールパラダイムを用いた検討の結果、手持ちのデータとも一貫性のあるデータを得た。いずれも、両手法の処理特性の違いを反映するものと考えられ、今後は双方の特徴を考慮しながら、検討を進める必要があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの主だった実験では、名前を発声したものを録音し、編集することより、実験刺激を作成していたが、今年度は、各種の人工音声の簡便性、明瞭性、刺激としての適切性を検討し、当面の目的に適うものを選定することができた。なお、現在では人工音声にも幅広い選択肢が存在しており、バリエーションの問題や、生声との対比の問題、感情を取り入れる場合の問題については、継続して考慮する必要がある。今年度は選定した人工音声を用いて、新たに単一刺激パラダイムを用いた検討や、同一音節から始まる名前や物体名を用いた実験的検証に着手し、パラダイムごとの特性の違いを反映した事象関連電位の傾向や、これまでのデータと類似点や相違点に関する知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の成果として、単一刺激とオッドボールの手法の違いにより反応が異なることが示された。今後は相互の特色を考慮しながら、当初の目的に沿って自他名の効果や、音節や音声の類似性の効果等について順次検証を進める。単一刺激の方法では、セッション進行の効果が明瞭にみられたため、今後はこの効果を手法ごとに検証することも課題になるであろう。それにより、各計測手法における情報処理過程に関して示唆が得られる可能性がある。ここでの手法の違いは、呼びかけ刺激の出現頻度と関わる(従来用いてきたオッドボールパラダイムでは頻回に名前が出現する)。そのため、呼びかけによる機能計測に適した刺激の時間的要因に関する示唆が得られる可能性もある。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在、人工音声ソフトには高額な業務用に加え、一般向けの安価なものや無料で利用可能なものが市場に出ており、いずれも以前とくらべ非常に質が高くなっている。当初の目的からも容易に刺激作成が可能であることは重要なため、無料および安価な人工音声ソフトも積極的に検討した。その結果、高額なものをあえて購入する必要性は低いと判断し、安価なものを当面の目的のために利用することにした。その他の面でも効率的な運用に配慮した結果、次年度使用額が生じた。 平成26年度以降にも、引き続き、機器類およびソフトウエア類の更新や、謝礼を要する作業を計画しているが、配分額は大幅に下がる見込みである。次年度使用額が生じた分は、その分と合わせて、引き続き効率的な活用を行う。
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