研究課題/領域番号 |
25381004
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
清水 禎文 東北大学, 教育学研究科(研究院), 助教 (20235675)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 教育学 / 近代ドイツ / 思想史 / 保守革命論 / 文化批判 / メディア論 |
研究実績の概要 |
本研究は、主としてワイマール期を中心とする雑誌の諸論考を近代ドイツの文化的表象として見立てて分析し、これらの論考における思潮から思想的・教育学的含意を抽出すること、またこの作業を通して1900年から1945年に至る思想的な「地殻変動」を明らかにすることを目的としている。 3年計画の最終年度にあたる平成27年度においては、1920年代後半から30年代にかけて、政治的・経済的な動揺、また伝統的・保守的な思想傾向が強まる社会的文脈の中で、総合雑誌が発信した情報の分析を行った。主たる分析対象とした雑誌は、保守革命論を牽引し、保守的な傾向の強い『タート』、そして相対的にリベラルで、進歩的な傾向の強い『世界舞台』である。これらの雑誌記事分析を行った。 雑誌記事分析を通じて明らかになったことは、以下の通りである。第一に、1920年代後半から1930年代においては、1920年代前半までに見られたように、『タート』と『世界舞台』には共通する寄稿者は見出せなくなる。これは、右派系雑誌と左派系雑誌との境界が明確になったことを意味する。第二に、右派系雑誌と左派系雑誌の共通点として、東アジアを含むヨーロッパ以外の情報を発信し続けていることが上げられる。政治的傾向は異なるものの、両者ともに偏狭な国家主義にはとらわれていない。これに関連して、右派系雑誌においても、反ユダヤ主義の論考は見られない。 残された課題は、昨年度の概要にも記したように、またR・コケモール教授からも指摘されたように、分析が政治思想史・社会思想史的分析に傾斜しており、当時の教育学の理論や実践を視野に入れて分析を行うことである。また、ワイマール時代の文化的傾向は今日の欧州における多元化と国家主義との均衡を求める傾向と類似しているため、現代的な視点をも取り入れた分析が必要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
遅れている理由は下記の2点である。 第一に、昨年度の秋、フランクフルトで行った資料調査において新資料を発見し、これらの資料を最終的な研究成果に含めるためである。第二に、昨年度の秋、ハンブルク大学のライナー・コケモール教授の指導を受けた。その際、現代的な視点と教育学的な視点を加えて研究成果をまとめるように助言を受けた。
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今後の研究の推進方策 |
上述の遅延理由に示したとおり、新資料を加えて研究を進めること、また現代的視点と教育学的視点をより取り入れることによって、研究方針に若干の修正を加える。このことによって、研究成果がより多面的に評価されるようにする。 研究計画(タイムスケジュール)については、基本的なデータはほぼ揃っており、もっぱら上記の2点に留意しながら、研究成果をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年10月に行ったドイツ・フランクフルト大学等での資料集において新資料を発見した。これらの資料を含めて研究をまとめるため。また2015年11月に招聘したハンブルク大学教授R・コケモール氏の指導助言を受け、教育学的な視点と現代的な視点とを含めるべく、研修方針の微修正をする必要を感じた。これら2点を意識しつつ、補助事業の当初の目的をより精緻に達成するとともに、研究の拡がりを確保するこため、節約して研究費を使用したため。
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次年度使用額の使用計画 |
上記理由欄に示したとおり、2016年度はこれまでの研究成果に微修正を加え、研究を総括する。
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