研究課題/領域番号 |
25381006
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
佐藤 哲也 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (10273814)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コトン・マザー / ピューリタン / ピューリタニズム / A Token for Children / 回心体験 / 17世紀 / ニューイングランド / 教育思想 |
研究概要 |
資料収集とその整理を中心に研究に取り組んだ。Cotton Mather 自身の著作物に加え、ニューイングランドをめぐる社会史研究や宗教思想に関する先行研究を集めた。研究成果は、世界子ども学研究会第11回例会(神戸女子大学)にて「児童文学の黎明としての“子どもの回心事例集”」として発表をした。そこでは『子どもたちへの形見(A Token for Children)』(James Jameway版とCotton Mather版)を取りあげて、その内容や構成、メッセージについて比較検討して、テキストに秘められた教育機能や古典的な子ども観の揺らぎについて注目した。17世紀後半から18世紀初頭にかけて、“子どもの回心事例集”は会衆派教会主義を標榜する人々の間に広く流布し、当時の英米において聖書や『天路歴程』に次ぐベストセラーであった。それらは、教理問答書を補完する機能を果たすと共に、実在した子どもを主人公とした〈死の事例集〉として、「信仰、病と苦しみ、罪への怖れ、キリストへの愛と信頼、回心、永遠の命に扉を開く死」といった信仰モデルを確立していった。ピューリタンの子育てにおける主要テーマであった「子どもの意志を挫く」必要性が繰り返し強調される一方で、体罰に代わる教育手段としての心理罰的効果が期待されていたことが読み取れた。しかも、“回心事例集”が繰り返し話し読み聞かせる、すなわち反復効果によって、回心の形態学が自ずと読者や聴者に刷り込まれる効果に注目した。“子どもの回心事例集”は子どものみならず子育てに関わる大人の精神性に与えたインパクトを与えたが、児童文学への扉を開いていったことも指摘できる。そのモチーフや表現技法は、18~19世紀リバイバル(信仰復興運動)時のトラクト、19世紀の社会派小説、ヴィクトリア朝の「お涙頂戴モノ(tear-jerker)」にも影響を与えたのであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
所属講座(幼児教育講座)は、教授・准教授の2名体制で構成・運営されている。平成25年度は同僚教授が病気による休職することになり、私1人で幼児教育講座と幼小連携推進研究室の運営に携わらなければならなくなった。幼児教育コース学部生は1年生から4年生まで合わせて64名。全学年の学年担当教員として学生の修学・生活指導に当たるとともに、4年生16名の卒業研究指導教員を務めなければならなかった。そのため、大学を長期に渡り留守にすることが難しくなるとともに、研究時間の十分な確保ができなくなった。当初計画していた海外出張(研究資料の調査)にも出られなかったことにより、新たな資料の発見や原資料を調査して確認すべき歴史研究における基礎作業が滞ってしまった。そこで、研究内容を文献資料やジャーナル論文の収集、1次資料デジタル化(アルバイトを雇用してのワープロ打ち)等に切り替えて、パソコンを2台購入して課題への対応を図った。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に収集した文献資料を丹念に読み解いて考察を進めると共に、海外出張のタイミングを見計らい、1次資料の確認と収集に努めていく。また、初年度の研究会報告を論文としてまとめるとともに、教育史学会のような専門学会でも口頭発表を行い、広く専門家集団による助言や情報交換の機会を得ていく。
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