研究課題/領域番号 |
25381006
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
佐藤 哲也 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (10273814)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ピューリタン / コトン・マザー / アメリカ / ニューイングランド / 子育て / 教育思想 / 子ども史 / 幼児教育 |
研究実績の概要 |
今年度はCotton Matherの著書(reprint版)を調査・収集した。また1年目に引き続き、子ども史研究、ニューイングランド植民地研究、アメリカ宗教史研究、ピューリタン研究の文献を収集するとともに、子育ての主体として期待されたHousewife(家母)の歴史的・社会的実態を把握するために、17・18世紀の英国及びニューイングランドの女性史、母親史に関する文献資料にも手を伸ばした。それらの文献を読み解きながらピューリタンであるCottonの思想をより広い社会的文脈から捉え直すための準備を進めた。 Cottonによるテキストを読み進めるにつれ、若者世代への信仰の継承、共同社会での規律正しい行動、自己の罪を内省によって自覚し、祈りと聖書の学びを持って救済を目指すことを勧める言説は、第二世代の指導者であった父Increaseの問題意識を継承するものであることを確認した。New England共同体の精神的危機的がいっそう深まる中で、苛立ちと罪意識に怯えるCottonの心情を捉えることができた。 また、教育史学会第58回大会(日本大学文理学部)、世界子ども学研究会例会(青山学院大学、神戸女子大学)に参加して研究情報の収集に努めた。教育史学会では教育史研究に関するレリバンスをめぐるシンポジウムを拝聴しながら、17世紀アメリカの一牧師を研究することが、今日の子育てや保育実践にどのように寄与していくのかという課題について自問する機会を得た。また、世界子ども学研究会では、古今東西の子ども史、子ども観の社会史研究に学ぶことで、植民地ニューイングランドの子ども観研究をグローバリズムの文脈に位置づける必要性と可能性を自覚することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度、教授に昇任した。同時に幼児教育講座主任教授、宮城教育大学幼小連携推進研究室室長に就任した。幼児教育コース1年生(24名)、2年生(15名)、3年生(14名)、4年生(18名)、これら全学年の学年担当教員を務めるとともに、4年生16名の卒研指導、就職対応等に対応した。 講座同僚の体調不良のため、業務を1人で担わざるを得ない状況であり、論文執筆、学会発表などへの時間と体力・気力を捻出することが極めて困難な事態に陥った。海外出張に出ることもできず、まとまった研究時間を確保できないことから、3年目あるいは将来の研究に資するよう、研究資料の収集と分類に努めることに方向転換した。 Cottonの前期教育思想についてはさらなる研究と考察の必要性を痛感している。彼が父親となり何人かの子どもたちを事故や病気で亡くすなど、ライフコース的にも様々な困難に直面したことで、子どもや子育てについての考察が深まりっていたことが明らかになったからである。それゆえ、後期思想の研究に舵取りをするよりもむしろ、前期思想を徹底的に理解することがピューリタン教育思想研究を深める上で有益であるとの結論に至りつつある。Cottonの子育てや子どもとのかかわりをめぐる言説や歴史的事実を徹底的に洗い出しながら、考察を一層深めていく必要を感じている。 上記の理由から、Cottonの後期教育思想に関する研究には踏み出すことができず、研究2年目を終了した次第である。
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今後の研究の推進方策 |
勤務校における就業・研究環境に変化はないが、1・2年目に収集した資料を活用しながら、研究成果としての論文を書き上げていきたい。特にCottonが前期思想の集大成としてまとめたと言えるFamily Well Ordered(1699)とA Token for Children in New England(1700)を中心に、彼の子ども観、教育観、家庭教育論を解明していきたい。また、同時代のピューリタンライターが残した日記や回顧録を繙きながら、Cottonの礼儀作法書、回心語録、カテキズムが、子どもたちの宗教教育や読み書き学習にどのように取り入れられていたのかを明らかにしたい。 さらには、グローバリズムの観点から、ピューリタン運動を捉え直す近年の研究を援用しながら、本国イングランドやヨーロッパ・プロテスタント圏の歴史的資料や先行研究を視野に入れながら、国際宗教改革運動としてピューリタニズムを捉え直し、共通性と独自性といった視点からニューイングランドの社会史的状況、精神的エートスを明らかにして、Cottonの思想の独自性、国際性についても明らかにしていきたいと思う。 また、アメリカ研究調査の日程を確保して、資料の発掘・収集に努めたい。特に、Cottonの研究でいくつかの注目すべき業績を挙げたカンザス大学ローレンス校のハイナー教授が収集したコレクションを閲覧し、本譜に紹介されていない研究情報にアクセスしていくためのチャンネルを開きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
校務が忙しく、海外出張に行けなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
3年目の海外出張費に加算することで、十分な研究調査ができるよう、対応する。
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