国内では、教科書研究センター付属図書館において、日本の学習指導要領と日本・ドイツ・イギリスの教科書(一次資料)の調査を、また国立国会図書館において、同3カ国の歴史教育政策についての文献(二次的資料)調査を、ともに通年にわたり継続的に行った。また、日本の歴史教科書問題で最重要課題の一つである沖縄戦の記述に関する調査の為、学童疎開輸送船攻撃を伝える「対馬丸記念館」(沖縄県那覇市)、米軍上陸で受けた被害を伝える「浦添グスク」(同県浦添市)、日本軍による強制避難に起因する戦争マラリア禍を伝える「八重山平和祈念館」(同県石垣市)で現地情報収集をした。その他、歴史教科書記述問題に関わる情報収集の為、「京都市学校歴史博物館」で戦時中の障害児に対する教育(特別支援教育)と、「吹田市立平和資料館」で学童疎開についての調査を行った。 国外では、ドイツ(現代史研究所付属図書館)で歴史学習政策についての調査を行った。特に、ナチス政権時代の民族差別主義的優生学教育に関する調査は、上記の日本の戦時中の特別支援教育との比較検討の上で有効であった。 以上の調査結果は、学術論文として2件(日本語1件「第二次世界大戦とホロコーストの記憶、その継続性と変化-ヨーロッパそしてイギリスにおける歴史教育について-」(英語1件“Contextualisation of History Education: Teaching about World War II in Japan”)行い、学会口頭発表として2件(国内1件、国外<タイ・バンコク>1件)行った。うち、日本語の論文は査読つきであり、英語の学術論文は、国外学会で発表した論文がプロシーディングスに掲載されたものである。 加えて、学会という場のみならず、中等教育学校への出張講義「歴史教育の国際比較-記憶の変化から学ぶこと-」(於:東京都立桜修館中等教育学校、3月15日)という形で、広く社会に研究成果を発表することができた。
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