研究課題/領域番号 |
25381011
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
池内 慈朗 埼玉大学, 教育学部, 教授 (10324138)
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研究分担者 |
小澤 基弘 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40241913)
松村 暢隆 関西大学, 文学部, 教授 (70157353)
冨安 敬二 立教大学, 文学部, 教授 (70180180)
奥村 高明 聖徳大学, 児童学部, 教授 (80413904)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | エントリー・ポイント / MI理論(多重知能理論) / ハーバード・プロジェクト・ゼロ / 発達障害 / 2E / 知能の凸凹 / 認知特性 / Making Thinking Visible |
研究実績の概要 |
ハワード・ガードナー(ハーバード大学教育学大学院教授)が提唱するMI(多重知能)理論から援用した個々の思考パターン、興味の持ち方の違いを考慮したエントリー・ポイント(学習の入り口)の調査を特別支援教育・発達心理学的見地より、エントリー・ポイントとの関連性の調査・授業実践研究を実施した。 (1) MIチェック法の再構築、中学校で、生徒のMIを含む認知的個性の把握およびそれを活かした総合学習・教科授業の開発。 (2) 海外でのエントリー・ポイントに似通った実践を行う小中学校・美術館等の調査と適応化の実施を行った。ドイツ・デュッセルドルフでの基礎学校、ギムナジウム、特別学校、シュタイナー学校5校の授業観察や聞き取り調査、オランダ・アムステルダム等の学校・美術館等での造形活動・美術鑑賞教育の事例の調査。ではトロッペン・ミュージアムにおけるハーバード・プロジェクト・ゼロの実践、とくにMaking Thinking Visible(思考の可視化)やVisual Thinking Strategy(視覚的思考の方略)を指導している元学芸員からの聞き取り調査を行った。また、ロンドン・テートギャラリーにみられる、歴史や社会状況などの対象を成立させる「文脈(Context)」重視の問いなどエントリー・ポイントの多様なアプローチを網羅した個々の思考プロセス、認知的特性を活かす学習方法である点を海外での調査から発見できた。 (3)2E教育の観点から高校と大学が連携した発達障害生徒のMI等、得意を活かす支援の調査・授業実践研究。さいたま市近郊の障害者施設の発達障害者・小学校の健常児の子どもたちの描画の制作過程の分析を通して創造性の研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度の研究は、エントリー・ポイント(学習の入り口)の調査に関する課題であり、以下3つのアプローチから実施することができた。 (1) 特別支援教育・発達心理学的見地より、エントリー・ポイントの調査・授業実践研究を中学校で、生徒のMIを含む認知的個性の把握およびそれを活かした総合学習・教科授業の開発ができた。 (2)ドイツ、オランダでのMLV、VTSなどエントリー・ポイントに似通った実践を小中学校・美術館等の調査の実施を行った。ロンドン・テートギャラリーにみられる、「モノ(Object)」、「主題(Subject)」、「文脈(Context)」からの鑑賞教育理念は、それがなぜ博物館にあるのか、なぜ美術品になったのかという歴史や社会状況などの対象を成立させる「文脈(Context)」重視の問いなどエントリー・ポイントのfoundational な問いと重り合い、一昨年調査した英国・大英博物館でのハンズ・オン・アプローチもまた含まれ、エントリー・ポイントは一般的に知られていないだけで既に多様なアプローチを網羅した有用性・普遍性のある学習方法であることを裏付ける発見ができたことも成果である。 (3) 2E教育の観点から発達障害生徒のMI等、得意を活かす支援の調査・授業実践研究。さいたま市近郊の障がい者施設の発達障がい者・小学校の健常児の子どもたちの描画の制作過程の分析を通して創造性の研究ができた。 以上、メンバーの多様な研究視点より、各自のテーマにそって代表者と協議しつつ調査、研究を行っており成果をあげることができている。これらの事から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1. 平成26年度に着手したエントリー・ポイントとの関連性の調査・授業実践研究の結果を分析して、さらに展開を図る。特に発達障害と才能を併せもつ2E生徒への支援に焦点を合わせ、教師の意識調査や2E生徒のニーズの基礎調査等、学習意欲を高める実証的研究をより綿密に進める。また、幼稚園、保育園などで2E教育の観点研究から、幼児の早い時点より強弱がみられ、MIからみた知能の凸凹や特に空間認識と読字能力(言語的知能)との関係について、また、さいたま市近郊の障害者施設(工房「集」)、さいたま市内の小学校の特別支援学級の描画(ドローイング)の調査と分析を行い、障害児、健常児の子どもたちの描画の制作過程とそれらを比較して創造性に対する考察を更に深める。 2. ドイツ、オランダ等の学校・美術館等での造形活動・美術鑑賞教育の事例の調査からプロジェクト・ゼロの実践、Making Thinking Visible(思考の可視化)やVisual Thinking Strategy(視覚的思考の方略)の収集資料の調査分析をまとめ、できれば追加調査も行えるか検討している。上記の調査をふまえ海外の小中学校・美術館等の調査と適応化の実施の研究を行う。ロンドン・テートギャラリーの「文脈(Context)」重視の鑑賞教育理念、エントリー・ポイントに似通った実践を調査して行く。 3. 特に美術でMIをエントリー・ポイントとして活かすことを重点として、より学習を深めていくため、発達障害の生徒、健常児に得意・興味を活かして苦手を補う指導・学習の可能性を探究する。2つの得意知能を用いて苦手を克服し、美術、社会科等の授業で、児童生徒に「取り柄」を伸ばし、その得意を活用して学習困難を補償し、教師側も児童・生徒のMI、認知特性を理解したうえでの指導に役立てる学習支援の方策を開発する。 最終年度の全体のグループの研究をまとめ、国内・国外の関連学会での研究発表、学校園等にリフレットなどで最終的な成果を公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
第一の理由は、当初より計画していたH26年度に代表者が、34th World Congress of the International Society of Education through Art (InSEA国際美術教育学会オーストラリア世界大会)にて学会発表を2014年7月10日に予定していたが、題目「 MI theory and Dyslexia: The Concepts of 2E (Twice-Exceptional) for Using Entry Point Approach for Visually Gifted Child (Reference Number: 1223) 」(Paper Oral Details:Abstractの段階から査読があり通過した。Eメールにて受信し、Web上でスケジュールが閲覧可能 <http://www.insea2014.com/d/program/InSEA2014_Abstracts_Oral_Presentations.pdf5月8日確認>)急病のため(英語診断書あり)欠席したためメルボルンに行けなかったため。また第二の理由は、基金化で、分担者の使用予定がH26-H27年度に繰り越され分担者の計画があるという理由。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度、本研究の成果を報告書としてのリフレット300~500部を作成し国内学会、教育機関等で配布し、成果発表する事等の計画をしている。その報告書作成経費等は、代表者の繰り越し分で清算する事とする。また上記にあげた第二の理由である、分担者のH27年度の使用計画があると考えられ問題なく使用する。
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