研究課題/領域番号 |
25381013
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
勝野 正章 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (10285512)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 教員評価 / モデル / 国際情報交換 / 米国 |
研究概要 |
米国における教員評価の「有望モデル」に関する横断的研究を実施した。具体的には、(1)現代米国における教員評価政策並びに制度に関する既存の事例研究及び評価研究のレビューを進めるとともに、(2)9月にミネソタ州ミネアポリス市、3月にニューヨーク州ロチェスター市で実地調査を実施し、教育委員会の担当職員、校長、教員、教職員組合の委員長及び担当職員から教員評価システムの実施状況、成果、課題等について聞き取りを行った。両市の教員評価はともに、同僚からの専門的支援を通じての教員の職能成長を目的とするPAR(Peer Assistance ad Review)をベースにしている。しかし、ニューヨーク州では現在連邦レベルで推進されているRace to the Top政策のもと生徒の学力テスト結果の教員評価への反映、教員評価結果の査定的利用が実施されているのに対し、ミネソタ州ではこのような運用は実施されていない。その結果、米国における教員評価の「有望モデル」の一つと目されるPARの目的、システムを共有していても、異なる政策的文脈のもとでは異なる意味を持ち、成果と課題も異なることを当事者の聞き取りから具体的かつ詳細に明らかにすることができた。また、多くの市において、PARの導入、実施にあたって教職員組合が教育委員会と協同で積極的に取り組んできたことが特徴であり、ミネアポリス市ではこの協同関係が持続されていた。この点は、教員評価の「有望モデル」の日本での応用や一般化可能性を検討する際にきわめて重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の当初計画では、現代米国における教員評価研究の第一人者であるカリフォルニア州立大学フラートン校のJennifer Goldstein教授との研究交流を行う予定であったが、同教授が研究休暇を取得したため、Eメールでのコミュニケーションに限られ、必ずしも十分ではなかった。予定していたカリフォルニア州での実地調査も実地できなかった。その代わり、ハーバード大学のSusan Moore Johnson教授の紹介を得てミネソタ州ミネアポリス市での実地調査を実施した。また、ニューヨーク州のロチェスター市の実地調査ではロチェスター大学のDavid Hursh教授との研究交流を行った。結果的には、ミネソタ州とニューヨーク州において、異なる政策的文脈のもとでの教員評価の具体的問題点を研究できたので、概ね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、教員評価の「有望モデル」の一般化可能性を志向しつつ、文脈固有性の観点からの検証を行うものである。平成25年度は米国内での州レベルの政策的文脈の相違という視点から、この研究課題を進めることができた。平成26年度は米国以外の「有望モデル」を研究対象とすることで研究をいっそう推進する。具体的には、ノルウェーの生徒による授業評価を取り入れた教員評価を対象にして文献研究及び実地調査を行う予定であり、現在、実地調査の準備、調整を進めている。ノルウェーの生徒による授業評価は、生徒団体と教職員組合との合意により実施されており、本研究で「有望モデル」の条件の一つとして注目している、教職員組合の役割について検討を行うのに適した対象でもある。また、平成25年度に実施できなかった米国カリフォルニア州での調査も本年度実施を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
アレンジメントを依頼していたカリフォルニア大学フルトン校のJennifer Goldstein教授が研究休暇に入ったためカリフォルニア州での実地調査を実施できなかった。 Jennifer Goldsteinに改めて調整を依頼し、カリフォルニア州での実地調査を実施予定である。
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