研究課題/領域番号 |
25381015
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
浅沼 茂 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (30184146)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナラティブ / 総合学習 / 相互主観性 / Crandirinin / 評価 / 学力テスト / ユーモア詩 |
研究概要 |
本研究は、ナラティブ・スタディが総合的な学習の成果を評価する上で、どのように役立ちうるかを明らかにするものである。教師は、自らの実践の評価をするときは、学力テストなどの結果を気にすることが多い。しかし、子どもたちの成長は、このような数字的なものでは教師の実践の質を測ることができない。子どもたちが自分たちの進歩を作文や絵画によって振り返り、表出することによって教師は、また、自分たちの実践の成果を振り返り、それによって自分たちを評価するという評価における相互主観性がナラティブのような文章のやりとりによって検証可能になる。このようなナラティブの手法は、アメリカなどにおいては、初めは教師自身が自らの成長を振り返るときに使われたりした。しかし、この手法が、生徒の成長の記録として使われるようになると、生徒の指導に役立てるようにもなった。このようなナラティブは、学力テストのような数字からは見ることのできない、個々人の内面の変化をたどることができる。それは、総合学習のように数字的な成果としては、出すことが難しい、生徒の成長を把握する上で重要な方法を提供してきた。カナダでは、Crandirinin などがそれを個々人の生徒のセラピーとして応用して成果を上げていた。他方、日本では、生徒の成長を記録する方法としてユーモア詩などのように生活詩として記録し、発表し、自分を見つめるというような手法があった。それは、生活綴り方のような経済的困窮を綴りあげることではなく、生徒たちの内面から浮き出てくる自発的な能動的な明るさを示している。それは、単純に環境的な要因が人間を形成するのではなく、個々人の持つ明るい成長の姿を示すことが多い。総合学習は、このようなポジティブな人間形成に関わっているという理論的、実証的な根拠を資料としてかなり集めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
米国での学会や学校調査においてナラティブが個々人の評価に大きな役割を果たしていることを知ることができた。それは、多様な学校の種類によらず、多くの成果を上げていることを見ることができた。このような実践の現実的なデータは、貴重な根拠となっている。また、日本においても、子どもたちの成長を捉えるためにナラティブが有効であることを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、さらにフィールド調査を進めるとともに、子どもたちの記録の質的な分析の枠組みを理論的に発展させることをめざす。とくに、子どもたちの思考力の発達との関連においてそのデータの質の基準を明らかにしたい。
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