研究課題/領域番号 |
25381015
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
浅沼 茂 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (30184146)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 相互主観性 / 主観性 / 自己客観化 / 内面の形成 / ナラティブ / プロジェクトメソド / 総合学習 |
研究実績の概要 |
学力観とナラティブスタディにかんする先行研究の資料を収集した。特に、米国進歩主義教育の中で、プロジェクトメソドや総合学習として発達してきた単元について、現在実践されていたる学校を観察記録した。本研究では、第一に、1970年代そして80年代に表されてきた生徒の生活史を材料として集めた。さらに、評価の枠組みの洗練化に向け、さらに多くの実践の現場から探究学習の成果を生徒一人ひとりが書いた文集から見取り、探究学習の成果がどのような形で出てきたのか、児童生徒のインタビューや生活史を見る。さらに生徒の主観性を把握するための道具として、類型化する概念と理論の開発を試みる。主観性を明らかにするための理論は現象学的な枠組みを利用し、概念化を試みる。特に主観性を生活世界の地平分析として、類型化し、その質の変化を捉える。発達変化の地平は、自明の前提と自己を超越する自己客観化と自己を再構成するプロセスにより、自己客観化と自己再生のプロセスが重要な自己発展のステップとなる。本研究では、生徒同士の働きかけ、そして教師の働きかけがどのような相互主観性を生み、個人史の内面を形成してきたのか、内実を明らかにする。そのためにも、生徒一人ひとりが描いた生活史を収集することが重要であり、作文や文集から見られる個々人の変化を明らかにする。そこにおいて、探究学習の課題がそのような意味をもち、個々人の発達に影響があったのかをみる。その分析の枠組みをさらに発展させる。さらに生徒の主観性を把握するための道具として、類型化する概念と理論の開発を試み、超越論的な主観性の領域がどのような内容を提示し、他者の存在と自己の内面の形成が具体的にどのような内容となっているかを客観的に見ることができるようにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、子どもたちの書いたもの、描いたもの、そして他の人との関係性について記録を収集することに多くの時間を費やした。それは、日本だけではなく、米国も含め、実践の現場に関わってきた。子どもたちの主観性については、ビデオ取りの許可もらい、その内面の動きを探った。子どもたちの言葉や動作の表出は、子どもたちの内面の変化の過程を追うのには、有効で有り、その表出を文章にすることによって、子どもたちの語りが成り立つ。子どもの語りは、学力テストや点数による形よりも能弁であり、何について喜び、何について語りたいのかを表出している。これらの記録やデータから、子どもたちの興味や関心や動機づけが、多様なものであり、特に、家族との関係性、友達との関係性、そして、教育者というような順序でその重みづけが異なり、そこに生まれるストーリーが子どもの世界に意味を与え、形づくられていることが理解できる。子どもたちは、なぜ、勉強をするのか、何に興味をもち、そのことについて生きがいと楽しみを見いだしているのか、それが結局は、学力に影響を与えていることが明確であった。
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今後の研究の推進方策 |
探究学習の成果は、ともするとその活動内容に多くの関心が集まりがちである。それに対して、本研究では、子どもたち同士の働きかけ、そして教師の働きかけがどのような相互主観性を生み、個人史の内面を形成してきたのかを史料やデータをさらに収集し、分析を試みる。そのためにも、子ども一人一人の生活史をさらに収集する。また、成人の内面史分析も自分の子ども時代を振り返ることにより、子ども時代の一つ一つの経験の意味を内観法的に暴き出すことが可能になる。そこにおいて、学習への動機づけの個々人の変化そして、子ども時代において特に大切であったことなど、経験の質を吟味できるようになる。探究学習は、テーマの斬新さ、テーマの問題性だけではなく、子どもたちの内面において意味をもったものでなければならない。この意味は、類型化が可能である。特に、精神分析的に発達過程として描くか、あるいは、文化的意味の多様性としてとられるか、その分析枠組みについては、吟味が必要である。このような課題の類型ととその深さについてさらに研究を進めてゆきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品が思ったより安く購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品に充当する予定。
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