研究課題/領域番号 |
25381017
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
津田 純子 新潟大学, 教育・学生支援機構, 教授 (90345520)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | コンピテンス / 深層構造 / 自己調整の過程 / コミュニケーションコンピテンス / 構成主義 |
研究概要 |
2013年度は、チョムスキーのコンピテンス概念がドイツに紹介されて活発に論議された1980年代と、「80年代の論議の再燃」と呼ばれる現在の論議について文献研究とインタビュー調査を実施した。その結果、1980年代のコンピテンス論議がチョムスキーのコンピテンス論の一面性をとらえそれをどのように補完あるいは他分野に応用できるかをめぐるものであったことがわかってきた。 レンツェンが注目したのは、チョムスキーがコンピテンスを「認知的な規則システム」と呼び、意味上の解釈を決定する「深層構造」と音韻論的解釈を決定する「表層構造」に区分しその変形規則を問うならば、これを教育プロセスに参加する人の深層構造と固有の教育行動に表れる諸規則を問うことに応用できるとした。ピアジェは、二つの区分が図式的でコンピテンスを生得の諸原理とチョムスキーはみなしているが、そこには「内的均衡あるいは自己調整の過程が存在する」とし、思考の発達とは学習者が環境と相互作用する自己調整の過程」ととらえた。このとらえ方は構成主義に発展し現在のコンピテンス論に継承されている。ハーバーマスがチョムスキーのコンピテンス論を一面的と捉えたのも、「さまざまな談話の局面の一般的構造自体がさらに言語行為によっても作りだされることを考慮に入れていないことである。個人に表層構造をもたらす深層構造、基礎的コンピテンスの構造的概念が必要だとして、「コミュニケーション・コンピテンス」の次元を人間的コンピテンスシステムの部分として説明を試み、深層構造にあると思われるその他のコンピテンスを提唱した。 現在のコンピテンス論議については、ボローニャ・プロセスのもとでコンピテンスを学習目標に設定した大学教育改革の懸案事項(コンピテンスの評価)について研究した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年度は次年度計画した項目を前倒しして進め、チョムスキーのコンピテンス論がドイツ教育学にどのような啓発を与えたか、つかむことができた。この成果は教育史学会第57回大会で発表できた。大学教育学会第35大会では、現在のコンピテンス論議で最も懸案事項とされているコンピテンス評価の問題を取り上げた。ドイツへの出張では、ドイツ大学教授学会研究集会に参加することで、効率よく面談ができ、しかも連邦教育研究省・州政府の大学協定による資金供給で進展する教育改善プロジェクトの動向をつぶさにつかむことができた。コンピテンスを名前に持つセンターを面談調査し、違う観点からのコンピテンス論を聴取することができ大変良かった。大学図書館での資料収集も有効であった。計画通りではないが、研究は順調に進んでいると思う。
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今後の研究の推進方策 |
チョムスキーのコンピテンス概念について、①概念形成におけるフンボルトの影響、 ②ドイツで受容されているコンピテンス概念と米国心理学者D.C.マクレランドとの相違を把握することをめざす。文献探索と収集、文献研究、ドイツを中心とする調査を行う。 現在のコンピテンス論については、N. Schaper教授、S.Lepp博士の研究成果も参考にする。
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次年度の研究費の使用計画 |
ドイツ出張時(2014年3月)に注文した書籍が4月に届き、支払い手続きが滞っている。その際ドイツ大学教授学学会研究集会に参加し、参加費の請求が帰国後であったため支払いが遅れている。 書籍の支払いと大会参加費の支払いを近日中に済ませる予定である。
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