本研究は、授業のコミュニケーション過程において、教師や級友の話を聞くことが、生徒の思考力・判断力・表現力の形成に与える影響を明らかにしようとしている。平成27年度は、平成25、26年度に引き続いて授業を参観すると同時に、大阪市・大阪府下以外の学校として秋田県東成瀬村立東成瀬小学校の授業を参観した。1~6年生までの一貫した「話す―聞くースキル」形成の有用性、ならびに「聞く―話す」こととならんで「聞く―書く」ことの意義を確認した。またオーデンセ(デンマーク)で開催されたIASCEの2015年大会に参加した。学校訪問を含めて、協同教育として実践されているワークのテーマ並びに組織形態の多様性について知見を得た。 本年度は、最終年度であることから、25年度からの成果である授業のプロトコールを整理・分析した。分析の1点目は、話し合いのテーマと思考活動の関連である。「話す-聞く-話す」過程における思考活動は、話し合いのテーマと関連しているという仮説の有用性の確認に基づいて、話し合いのテーマを五つのパターンに分類し、それぞれのパターンと話し合いの関連を分析した。2点目は生徒同士の意見交換の場面を分析し、生徒の発言の関係を六つのパターンに分類した。意見交換の過程の分析をとおして、教師の指導のありようが、生徒の思考活動に関係していることが明らかになった。この2点からの分析の結果、話し合いの過程における生徒の思考活動に作用する要因の一つとして、話し合いのテーマのタイプ、ならびに教師による話し合いの過程の指導の重要性が明らかになった。この成果を基づいて、本研究の目的である、教師や級友の話を「聞くこと」が思考活動を促すようなテーマを設定した授業構成の在り方と、教師による話し合いの過程の指導の重点を提案した。
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