平成28年度は、入院休職期間があり、体調が優れず、復職後も思うような研究の成果は出せなかった。そのため、研究を継続することで成果をあげられるように、研究方法を修正し、調査協力を依頼し、翌年以降も資料を集められるように変更を行った。 実際の成果については、2点である。日本保育学会のシンポジウム「幼児の造形活動から考える小学校図画工作との連続性と非連続性」においてパネラーとして発表を行った。また、共著で出版した『DVDでわかる!乳幼児の造形』では、保幼小の造形が多様な教科への接続と展開、位置づけなどについて解説を行っている。この2点の内容を以下に簡単にまとめる。1)幼児の造形と小学校の教科としての図工の違いについて説明。幼児の造形活動は、総合的であるために自然材をすりつぶして色を出していくなどの例にみられるように科学的試行を行ったり、協同で制作したりなど、「環境」や「人間関係」といった他の領域との関連が強く、小学校では図工のみならず、他の教科にもつながっていく。小学校の図工は、関心・意欲・態度、発想や構想、創造的な技能、鑑賞といった評価の4観点を持ち、限られた時間の中で、子供の造形的な思考や創造性を授業のねらいにそって高めていくものである。このことから、幼・小では、ねらい・目標の範囲が異なることを報告している。そのため、幼・小の造形と図工とは、連続しているものの実際は同じものではないとした。2)幼児の造形と小学校の図工の連続性について、具体的に理解しやすいものとして過去の筆者の研究成果を基に説明し、材料用具を扱う経験についてつなぎやすい点として紹介した。幼小の造形と図工は、いずれも人間形成という目的を共有していること、幼児期にこそ大切にすべき物との愛着を育む経験や時間を保証していくこと、発達的視点から子供の気持ちに着目することが提案された。
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