研究課題/領域番号 |
25381026
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
河合 務 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (10372674)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 人口 / 移民 / 人種 / 国民統合 / 出産奨励運動 / 家族 / フランス |
研究実績の概要 |
19世紀末から20世紀中葉期のフランスの初等地理教科書における人口記述を分析した。とりわけ人文地理分野に人口記述が頻出しており、主な論点として①ヨーロッパ諸国とフランスとの人口比較、②移民・外国人問題、③人種問題、④フランスの〈一体性〉という主題、などがあり、また、「日本の人口増加」に言及する教科書もみられた。 ①「ヨーロッパ諸国とフランスとの人口比較」という論点は19世紀末以降、半世紀以上の長きにわたって記述され続け、「人口」という数こそが国力の増強につながることが強調されていた。②「移民・外国人問題」は第一次・第二次世界大戦の前後にまたがって記述され続けており、移民・外国人が帰化をせずフランス市民としての責務を引き受けないことへの批判的記述もみられた。③「人種問題」も両大戦期にまたがって記述された論点であり、肌の色によるステレオタイプの人種分類には疑問が呈されながらも、フランスは白人の国という暗黙の前提があったことを指摘することができる。④「フランスの〈一体性〉」という国民統合に関する論点では、為政者が公教育によってフランス語を普及させ地域語を駆逐した経緯に触れず、あたかも「言語の共同体」が「自然に」進行したかのような記述が行われていた。 こうした地理教科書の記述は、同時期に展開された出産奨励運動の人口言説と比べると多子家族の形成という論点には踏み込んでいなかった。しかし、人口数、出生率、死亡率、移民人口といった数字が教科書に多く記載されたこと自体が出産奨励運動の展開にとって有利な条件を提供したと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
19世紀末から20世紀中葉期のフランスの初等地理教科書の人口記述について、その記述箇所を特定するとともに主な論点の記述内容や記述された期間について分析し、併せて、同時期の出産奨励運動の人口言説と対比し検討を行うことができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
・フランスの道徳教科書を蒐集し、人口記述の分析を行う。 ・道徳教科書における人口記述が家族形成に関する論点と関連づけられているのかどうか分析する。 ・道徳教科書における人口記述と出産奨励運動とを対比し検討する。
|