研究課題/領域番号 |
25381026
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
河合 務 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (10372674)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 家族 / 人口 / 出産奨励運動 / 道徳 / 多子家族 / エゴイズム |
研究実績の概要 |
本年度はフランスの初等道徳教科書における家族・人口記述の分析を行った。19世紀末の公教育成立以降の「学習指導要領(programme)」との対応関係をも視野に入れながら第二次世界大戦以降に及ぶ期間の道徳教科書を蒐集し,まずは「家族」に関して記述されている箇所を特定し,次に「家族」記述と「人口」概念との関連性の分析を行った。 その結果,当該期間の道徳教科書の「家族」記述を,①「人口」概念と結びつかない「家族」記述,②間接的に「人口」概念と結びつく「家族」記述,③直接的に「人口」記述と結びつく「家族」記述,の3つに分類することができることが判明した。①の場合は,両親・祖父母への「従順」「尊敬」「愛」「感謝」がいわば普遍的な価値を有するもの強調される傾向がみられたが,②の場合,こうした諸価値に加えて「人種の永続」「社会の維持」が強調がみられた。1930年代に使用された道徳教科書に,この傾向がみられた。③の場合,「人口」や「人口減退」という用語とともにドイツ,イギリス,イタリアなどの近隣諸国との人口の国際比較や,外国からフランスへの移民の流入の問題といった出産奨励運動と関連性の深い用語・論点が教科書の記述に表れ,フランスの低出生率の原因を「エゴイズム」の蔓延に求め。その解決を道徳教育の課題として設定する記述がみられた。1960年代に使用された教科書に,こうした傾向がみられた。 また,1945年の「学習指導要領」において「人口動態教育」を行う旨が規定されており,その内容として「フランス人口の不十分さ」を補うために多子家族が望まれることが規定されていることも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度,地理教科書における人口記述を分析したのに続いて,2015年度は道徳教科書における人口記述の分析を遂行することができ,両者を比較対照することでフランスの教科書における人口記述の特徴を多角的に解明する基盤が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度は,家庭科教科書における人口記述の分析を行い,より多面的な分析を展開させていく予定である。
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