研究課題/領域番号 |
25381035
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
吉岡 真佐樹 京都府立大学, 公共政策学部, 教授 (80174895)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 教師教育 / 教員養成 / ドイツ / 教員試補制度 / 教育実習 |
研究実績の概要 |
1.昨年度現地調査を行ったノルトライン・ヴェストファーレン州について、教師教育改革の現状と試補制度の特徴について整理し、論文としてまとめた。この州の特徴としては、初等教員養成と中等教員養成を統一的な形態で制度化していること、教職課程に入る前の「適性確認」のための実習に始まり、学士課程、修士課程および試補期間での実習が統一的に整備されていること、さらに試補期間の指導において「コーチング」が重視されていることなどがあげられる。
2.本年度の現地調査として、11月上旬の10日間、ハンブルク州およびブランデンブルク州を訪問し、それぞれ大学および試補教育関係機関において聞き取り調査を行った。「都市州」であるハンブルクは、ワイマール期以来、教員養成の分野では集約的で先進的な制度を確立しており、今回調査でもその特徴を十分確認することができた。特にハンブルク大学と「州教員養成及び学校改革機関」とが、共同で「教員養成センター」を構築していることが注目される。また同州は、ドイツ語を母語としない子どもたち及び青年の割合がきわめて高く、それへの対応として外国で教員資格を取得した人々を積極的に教員として採用しようとしている点でも他州に先んじている。ブランデンブルク州では、人口減から学校及び学校行政組織の縮減が重要課題となっており、その実態について調査した。
3.これらの現地調査と並行して、ドイツの教師教育改革及び試補制度改革に関する文献資料の収集を継続的に行った。近年、新たな試補制度の下で始められている取り組みに対する評価研究が報告されはじめており、それらの整理作業を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(理由) ・本年度は、調査した2州に加えて、ヘッセン州、ブレーメン州、ベルリン州などの改革動向の整理と分析をめざしていたが、これらについては作業が遅れている。原因は研究時間が十分確保できていないことにあるが、併せて各州の試補制度改革の実態は複雑で、しかもそれが文書等ではなかなか明確に説明されていないことにある。また試補期間の指導のあり方については、各州ごとに実に多様でありまた依拠する教育学理論も一様ではない。そもそも試補制度に焦点化した先行研究は少ないため、各州の具体的な動向把握とともに、大局的な理論状況及び現状評価について解明する作業も併せて重視したい。
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今後の研究の推進方策 |
1.引き続きインターネット等の利用および研究論文の収集などを通じて、ドイツ全体の教師教育および試補制度改革の動向について分析する。
2.現地調査としては、10月上旬にバイエルン州およびブランデンブルク州他の調査を行う。バイエルン州は、伝統的に独自の教師教育の歴史を持っており、今回の試補制度改革においても北部および東部諸州とは異なった発想の改革を行っている。
3.今年度はまとめの年として、試補制度改革の動向とその評価について総合的な視野から整理・分析するとともに、教師の実践的能力(コンピテンツ)の標準(スタンダード)化、「コーチング」の理論と実態など、基礎的な概念や制度理念についての解明と評価を行いたい。
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