ボロニャ宣言に基づく大学制度改革および常設文部大臣会議による「教員養成スタンダード」の決定などを契機とした教員養成制度改革は、各州ともに現在までに一応完了しており、今後は特に試補期間の教育・訓練の改革に焦点が向けられている。 各州ごとに試補期間の養成形態は多様であるが、共通してみられる特徴は次のようにまとめることが可能である。 ①試補勤務の期間は最長24月、最短12月であるが、改革の進行に伴って次第に短くなる傾向がある。②具体的な養成方式は多様であり、それぞれに独自の理念をもって構想されている。例えば、ノルトライン・ヴェストファーレン州においては、新たな「コーチング理論」の導入と普及に力を入れている。③各州とも大学での養成、とりわけ修士課程における長期実習と試補勤務の関係について、養成担当者の人的な交流も含めて、新たなシステムを構築しようとしている。④教員国家試験の内容は、試補期間の勤務態度、最終試験の結果等、実に様々な要素の合算として複合的な形態となっている。その際、論文作成の課題を従来通り存続させようとしている州と廃止する州が拮抗している。 その他、注目すべき動向として、ノルトライン・ヴェストファーレン州では「適性確認実習」を新たに制度化している。これは、教員志望者に対して、学士課程で本格的に教職課程の履修を開始する前に、学校あるいは学校外の児童青少年施設において、20日の教育体験活動を課すものであり、教職に対する自らの適性を確認させようとするものである。また、試補期間の指導体制として特徴的な事例がバイエルン州の場合である。ここでは、他州に一般的であるような独立した「試補研修所」を設けず、拠点となる実習校を定め、そこを使って試補教員の研修活動を行っている。このような形態は以前から行われていたものであり、今回の制度改革においても変化はないようである。
|