研究課題/領域番号 |
25381047
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
古賀 徹 日本大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90297755)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 教員養成 / フィンランド / 教員組合 / 労働運動・政策 / 教員研修 |
研究実績の概要 |
昨年度の本報告書(研究実施状況報告書)にも記したように,本年度はフィンランドにおける教育実践の問題点や研修の実態をプログラム形成やカリキュラムレベルでの理解として明らかにしようと取り組んだ。そこで課題として,研修の実態や教員組織等をあげておいたが,26年度では教員組織としての「フィンランド教員労働組合:OAJ」と全国教育施策会議について調査研究を行なった。フィンランド教組は,1973年も創設されて以降,30年間で幼稚園から大学,職業教育機関までを含む教員を会員とするようになり,高い加入率と会員数を実現し,教育政策に重要な影響をもつようになってきた。もちろん労働政策や労働運動として中央組織にも加わることで影響はもつが,教育政策については労働条件や環境のみではなく,教科(カリキュラム)改善等についても関与をすることとなっている。それが全国教育施策会議への参加である。政治家,教育省,国家教育委員会に加えて,財界団体などとともに教員組合から教員の代表が参画する,この国民的な会議で国家としての教育へのコンセンサスが決定される。そのプロセスや北欧における労働組合の機能について検討を行なった。 なお,教員組合の研究として,日本の教員組合を研究する(科研費の)グループと共同研究発表の形で,日本教育学会(九州大学)で学校報告・口頭発表をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
教員組合という「教員組織」を研究する上で,他の科研費研究グループ(日本の教員組合に関する研究をテーマとする)と連携し,研究会に参加しながら議論を重ね,示唆を得てまた追究していくという形をとることができた。殊に政治学の研究者との交流を重ね,戦後の労働運動史について学び深めることができた点が,本研究にとって大きく得られたものである。この比較の対象としての基礎的な理解につとめたことで,一昨年の取材(インタビュー)で交流が始まったフォンランド教組の役職者との書簡の往復も,その内容の理解が進み,分析が順調に進むこととなった。先行研究のない分野に関しては,どうしても理解の「地平」ともいうべき基盤が必要であり,その基盤をつくりあげる作業に専念できたことが,さらに次年度以降の研究につながっていくと考えている。 これまで,平成25年度の大学でのカリキュラムレベルでの実施,26年度の実践現場の教員組織と教員教育,環境と研究を進めてきたが,27年度は残された課題である修士レベルでの教員養成にと視点を移していくことになる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は本研究計画の最終年度であり,フィンランド教育界における修士レベルでの教員養成の「政策的意図」と「成果」(評価)についてへの研究へと重心を移していく。本年の調査対象・課題は次の三点となる。 ①フィンランドの高等教育における教員養成機関について取材を行ない,資料収集を継続する。②修士レベルでの養成でなく教職に就いている教員について,史的分析を行ない,現況の議論をまとめ,フィンランドの政策を把握する。とくに「地域間格差」問題への対応に注目したい。③フィンランドにおける教員の構成とその身分や立場について,統計データの解析を進める。 ①②については,本研究課題の肝であるから集中して進め,そのより客観的な裏付けとして,あるいは発展的な課題ともなる③については進行の度合いによっては新たなテーマとして次にまわすことも考えている。 必要な研究費用としては,設備備品としての資料の購入費用とフィンランドへの調査旅費が主なものとなる。円安が進んだため旅費滞在費が超過しないよう圧縮と工夫につとめたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度にフィンランドへの渡航を抑え,国内での教育と労働問題研究と,フィンランド教員労働組合メンバーとの電子メール,書簡での往復の内容を精査するようつとめた。残した分を基金として,最終年度の研究費として実地調査に活用するため。
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次年度使用額の使用計画 |
短い時間(と経費)により効果的な調査を行なうため,事前のスケジュール(時間と対象)調整を入念に行ないたい。フィンランド語のみの取材対象となるため通訳の料金も必要となる。
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