フィンランドにおける教員養成課程の修士レベル化について、現地観察と取材、及び文献調査を進めてきた。2年目以降の計画としての、①ヘルシンキ大学を中心とする資料収集、②学校現場の観察(特に学習方法と評価)、③ヘルシンキとの比較のための周辺都市の調査、④カリキュラム調査、⑤海外向け「教育プログラム」の調査、のうち、⑤以外はほぼ計画通りに進めることができた。 ⑤については、最新のPISA調査においてフィンランドと日本とで逆転現象がみられ、フィンランド国内においても「海外向け」ではなく国内での教育制度に意識が集中しだしたことがあり、思ったほどの「パッケージ」化が進められなかったという現状がある。また、その流れの中から、2016年からの新カリキュラム移行が進められることとなり、その改訂過程については十分に調査することができたが、まさに変化の途上にあることから、この「カリキュラム」(④)についてもまだ個別の論文として記すに至っていない。 ただし、最終年度内に①ヘルシンキ大学の再調査を行い、また③周辺地域としてヴィヒティ市の学校調査を実施し、そこでモデル校における最新カリキュラム試行の実態を取材することができた。このフィンランドの新しい試みについては、免許状更新講習教材『新しい教育事情』(私立大学通信教育協会、2016年)に「世界の教育の動向」(フィンランドの教育)として記している。 最終年度の②学校現場観察として特に意義のあるところは、2008年、2009年に観察を行い、また個別論文にも紹介した「教育実践」(レヴァニエミ氏)について、追跡取材を行い、その「学習方法・評価」に関して学習指導計画の観点で確認をとることができたことである。「授業実践」については、個人の解釈や感想、あるいは読み違えも起こりうるが、その分析内容を授業者本人との間で確認をとれたのは大きいと考えている。
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