研究課題/領域番号 |
25381049
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
佐藤 隆之 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60288032)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 進歩主義教育 / よい市民 / シティズンシップ教育 / エシカル・カルチャー・スクール / ホーレスマン・スクール |
研究概要 |
第一に、コロンビア大学とティーチャーズ・カレッジにおいて、第一次世界大戦中の1916年から1917年にかけて行われた、新たな公教育や市民性をテーマとする連続講演について分析を進めた。心理学、歴史学、教育学、哲学といった様々な学問領域の専門家が、国家と市民の関係をどのようにとらえていたのかを明らかにした。これを元に、アメリカ進歩主義教育におけるシティズンシップ教育論のパターンや特質について考察した。 第二に、アメリカ進歩主義教育のシティズンシップ教育の実践について、上記の連続講演が行われたコロンビア大学ティーチャーズ・カレッジの附属校ホーレスマン・スクールと、同校近くにある私立校であるエシカル・カルチャー・スクールにおける取り組みの資料を収集し、分析を加えた。エシカル・カルチャー・スクールについては、ニューヨーク市にて資料収集を行い、同校のPTA発行の『学校と家庭』を中心に入手した。家庭や地域を巻き込んでの市民性育成がめざされたことがわかってきた。また、同校は最初期の進歩主義学校であるが、学校の歴史・思想・実践などについては十分に解明されていない。そのため、エシカル・カルチャー・スクール研究にも力を入れ、創始者のアドラーや同校のカリキュラムについての資料を入手して分析した。 第三に、19世紀の政治的な市民権を中心とする伝統的市民性教育が、都市化や産業化を受けて、社会問題の解決に寄与できる市民の育成に重点をおいた進歩主義的市民性教育へと変容したことを検討した。それを通して、形式的に認定された市民を、真のアメリカ国民である「よい市民」へと育成する教育論が構築された過程の一端を明らかにした。 上記の第一と第二の点に関する研究成果は、26年度に学会で発表し、論文にまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロンビア大学ティーチャーズカレッジにおける市民性論議、エシカル・カルチャー・スクールにおける市民性教育の理念や実践についてはかなり明らかになった。その一方で、当時の市民性教育全般に関する研究が十分にできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
遅れている、19世紀後半から20世紀初頭にかけての市民性教育全般に関する考察を進める。資料は概ね入手できているので、解読に力を入れる。また、研究内容を予定の年数でより充実したものとするために、アメリカ進歩主義教育に詳しい研究分担者を依頼した。連携をとりながら、進歩主義教育における市民性教育の実際や特徴を解明していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
コロンビア大学ティーチャーズカレッジにおける市民性論議と、ホーレスマン・スクールとエシカル・カルチャー・スクールの二点に集中したため、進歩主義教育の市民性教育全般に関する研究資料の収集が予定よりも進まなかった。そのための図書購入費などが十分に使用できなかったため。また、26年度より研究を変更して、研究分担者に加わって頂くことにした。打ち合わせ費や、分担者の研究費など分担者と連携した研究を実行するため。 進歩主義教育の市民性教育全般に関する文献の購入、分担者との打ち合わせを年に2回開催するための交通費(東京と大阪)、研究代表者のアメリカ・ニューヨーク市において調査研究、研究関連の消耗品費などに使用する予定。
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