本研究の目的は、19世紀末から1920年代のアメリカにおいて、新教育運動を背景として推進された市民性教育の思想と実践について、その主たる目的とされた「よい市民(good citizen)」の意味に注目して、その実態や意味(意義)を解明することにある。そのためにここでは、デューイとジョセフ・リーというほぼ同時代を生きた二人が提起した、対照的ともいえる「よい市民(性)」概念やその育成論に注目した。19-20世紀末転換点から1920年代にかけて大きく変容した市民性概念やその教育について、市民性概念の脱政治化という視点からその実態に迫り、民主的市民性教育論の原理的な特質や限界について理解を深めた。
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