高等学校の実際の展開は、初期の理念のように総合制・男女共学制・全入制には進まず、「高等普通教育を主とする高等学校」と「実業を主とする高等学校」とに分かれていくが、共通教養のカリキュラムは、いずれの高校でも国語、一般社会、保健体育、社会科1科目、数学1科目、理科1科目の合計38単位となった。この構造は今日まで踏襲されているあり方である。高等普通教育が「基礎学力に矮小化され」、「個性という得体の知れない概念によって蚕食」され「産業社会への追従を促す」個性化・多様化の教育に置き換えられたと批判される高校教育であるが、重い公教育の中核を担っている高校教育は、所詮、その課題を負って進まなければならない。この課題の中で、広島大学附属福山高校・中学の「クリティカルシンキングを育成する中等教育課程の開発」が注目された。同校は、「相手を批判する」という意味ではなく、「適切な基準や根拠に基づき、論理的で偏りのない思考をして、よりよい解決に向けて複眼的に思考し、より深く考えること」と定義し、この具体化として、新教科「現代への視座」を設置した。さらに大分県安心院高等学校では、小中高一貫のカリキュラム開発で、「読解力を基盤としたリテラシーの獲得」をめざし、言葉の不思議科、不思議探究科、未来探究科を新設するカリキュラムを開発した。京都府立西乙訓高等学校は、現行の世界史必修には問題があると捉え、地理的・歴史的視点から総合的にとらえる科目を開発した。千葉県立東金商業高等学校は、学校設定教科「キャリア」を設定して、地域活性化プロジェクト、介護実習やインターンシップなどの体験学習を柱にしたカリキュラムを展開した。これによって人間関係形成能力、将来設計能力、情報活用能力そして意思決定能力などを育成すると企図している。 これらは将来的には共通教養の在り方に影響を与えるカリキュラム開発として今後とも注目したい。
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