研究課題/領域番号 |
25381053
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
山崎 洋子 武庫川女子大学, 文学部, 教授 (40311823)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イギリス新教育運動 / 劇化法 / アセスメント / 評価 / ポリティクス / 国際研究者交流 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
平成26年度前期には、ロンドン大学における国際教育史学会第36回大会(International Standing Conference for the History of Education 36、7月)において、Building a peaceful society with citizenship: lessons from British progressives 1910-1930s.というタイトルの下に、劇化法(Dramatic Methods)の考案者であるハリエッタ=ジョンソンの教育思想を発表した。その際の指定討論者は海外研究協力者のDr Peter Cunninghamであった。また、ロンドン大学のInstitute of Educationとその図書館及び Archivesにて「劇化法」に対するパーシー・ナンの言説関連史料を収集し分析した。平成26年度後半は、劇化法の評価方法(パフォーマンスを含む)についてオランダのイエナプランのそれと比較した。具体的には、ライデン大学とイエナオランダ協会のjenaplan advise & schooling にて資料収集と意見交換を行い、ロンドン大学図書館及びケンブリッジ大学図書館で第一次史料分析を行った。さらに、劇化法が有するポリティクスとアセスメントに関して歴史的に解明するため、Primary Education に関する政府の審議報告書 Hadow Report(1931)を俎上に載せ、海外研究協力者のMr Gary Foskett(11月22日~12月13日招聘)と共に考察した。その際に、Mr Gary FoskettだけでなくDr Peter Cunnighamらの歴史分析の視点と教育実践家の見解を介在させた。その結果、定量分析ではなく、質的分析という評価の視点がこの新教育運動期に出現したことを解明した。また、新教育思想の逆説的な点をも再確認し、さらに研究協力者のProf. Roy Lowe より劇化法の評価・アセスメント課題の研究助言を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間計画の本研究は2年目に至ったが、これまでのところ研究目的に向けてほぼ順調に進んでいる。本研究の問いは、イギリス新教育運動が「子ども理解」と「カリキュラム編成」を軸に教師の自律性・専門性を促したにもかかわらず、他方で、ポリティクスに絡め取られる脆弱さがあったのではないか、その要因は新教育運動期の教育メディアに孕まれたポリティクスにあり、それは新教育思想に内包された両義性と理想の力学の帰結ではないかという点にあった。そこで、過去2年間には、基礎学校の女性校長・考案の新学習法の一つ、「劇化法」とその「評価法」(パフォーマンス)を俎上に載せ、教育思想史的観点から、(a)新教育運動の思考枠組みと思考様式の解明、(b)新教育のテーゼ「教育の自由」と理想(自己表現、自治、自己実現など)に内在するポリティクスとパラドクスの同定を行った。 従って、現在までの研究目的はほぼ達成されている、と自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、研究目的の三番目にあたる、(c)「自己表現」への意味付与と「自己評価」の思考枠組み、「自由」対「統制」の二項対立概念を越える回路の構築可能性の存在の有無を明らかにすることである。そこで、まず概念レベルと実践レベルの2つの観点からのポリティクスと評価の関係構造を、第一次史料との比較対照によって解明に向けて取り組む。そのために、現地での第一次史料の考察分析と海外研究協力者との研究会を8月~9月に実施し、後期には3年間の研究の成果をまとめる。
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