本研究の目的は、幼児期の音楽活動において「聴くこと」を重視する〈音楽家の耳〉トレーニングを導入し、音楽の流れを捉え、「音楽する」ための音楽基礎教育プログラムを開発することである。 平成27年度は、過年度に引き続き広島市内の私立幼稚園3園で「聴く活動」の実践研究を行い(平成20年から協力を得ているモンテッソーリ園で5回、平成25年度から協力を得ているモンテッソーリ園で5回、モンテッソーリではない園で11回)、映像による記録を撮り分析し、各園の保育者と園児の日常の様子などと照らし合わせてディスカッションを行った。このことにより、園児の日常と「聴くこと」に対する姿勢に関連性があることがわかった。また最終年度にあたり「聴く活動」を11回実施した園では、演奏家を招いて生演奏による「聴く活動」を実践し、「聴くこと」のみでなく演奏者とともに簡易な打楽器を用いて音楽を楽しむ活動も行ったが、継続して「聴く活動」を体験している園児が「聴くこと」に対して積極的な姿勢を見せることがわかった。「聴く活動」で使用する楽曲については、これまでの実践研究での使用曲を一覧にまとめ楽曲リストを作成した。 最終年度にあたり研究成果報告会を開催し、これまでの研究活動の報告を行い、幼児教育の専門家、音楽基礎教育の専門家を招きそれぞれの立場から「幼児期の音楽のあり方」について講演を行った。3園の研究協力園の保育者からは「聴く活動」についての感想、意見の発表が行われ「幼児期の音楽活動のあり方について」と題した意見交換会を行った。参加者は幼児教育関係者を中心に23名。また、音楽基礎教育勉強会を開催しフランスのフォルマシオン・ミュジカルと〈音楽家の耳〉トレーニングの体験授業を行った。 3年間の研究活動を研究成果報告会の内容を中心として活動報告書にまとめた。
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